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広島・矢野雅哉と前川誠太が書類送検 ゾンビたばこ問題の経緯と両選手のプロフィール・成績

広島東洋カープの矢野雅哉選手(27)と前川誠太選手(23)が、9月25日、医薬品医療機器法違反の疑いで広島県警に書類送検されたことが分かった。中国新聞デジタルの報道によると、容疑は「ゾンビたばこ」と呼ばれる指定薬物エトミデートに関するものだという。今年1月に発覚した羽月隆太郎元選手の事件に端を発するこの問題は、ついに現役の主力・期待の若手の選手2人を巻き込む事態にまで発展した。ここでは「ゾンビたばこ」問題そのものの背景、事件の経緯を整理した上で、矢野雅哉・前川誠太両選手のプロフィールとこれまでの成績を振り返る。

「ゾンビたばこ」エトミデートとは何か

今回の事件の核心にあるエトミデートは、もともと海外の医療機関で麻酔薬として使用されている成分だ。日本国内では医薬品として承認されておらず、電子たばこ用のリキッドに混入させる形で流通していたことが確認されている。摂取すると意識障害や呼吸抑制といった重大な健康被害を引き起こすおそれがあり、その独特の酩酊状態から「ゾンビたばこ」という俗称で呼ばれるようになった。「笑気ガス」と混同されることもあるが、成分としては別物だ。

厚生労働省は令和7年(2025年)5月、エトミデートを医薬品医療機器等法(薬機法)上の「指定薬物」に指定した。指定薬物に該当すると、医療目的などの例外を除き、製造・輸入・販売・授与・所持・購入・譲り受け・使用のすべてが禁止される。実際に、この成分を含む製品の使用をきっかけとした傷害事件や交通事故なども報告されており、単なる"嗜好品"では済まされない危険性を持つ物質だ。羽月隆太郎元選手をはじめ、今回の矢野・前川両選手も、この指定薬物の使用・所持等に関わったとされる容疑での書類送検となる。

薬機法上、指定薬物の個人使用・所持等に対する罰則は3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその両方と定められている(業として行った場合はさらに重く、5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金)。羽月元選手が受けた拘禁刑1年執行猶予3年という判決は、この法定刑の範囲内での判断だったことになる。指定薬物制度自体、既存の薬物規制の網をすり抜けようとする、いわゆる「脱法ドラッグ」「危険ドラッグ」を取り締まるために設けられた枠組みであり、覚醒剤や大麻取締法とは異なる法体系である点も押さえておきたい。

事件の経緯

そもそもの発端は、今回書類送検には至っていない時期にまで遡る。裁判での証言によれば、羽月隆太郎元選手が最初にエトミデートに触れたのは2025年3~4月頃、上京した際に先輩に連れられて訪れた東京・六本木のバーだったとされる。売人とされる滝口涼介被告(38、自営業)はこの時期からのバー仲間で、同年4月には都内のバーで直接エトミデートを提供したと法廷で証言している。1本2万円という価格でやり取りが行われ、同年11月には「野球カード」という品名を装って広島カープの選手寮宛てに書留で送付していたことも、裁判の中で明らかになっている。エトミデートが指定薬物に指定されたのは2025年5月のことで、羽月元選手がこれに触れ始めた時期とほぼ重なる。

こうした水面下でのやり取りが、2026年に入って一気に表面化することになる。今回の書類送検に至るまでの流れを、時系列で確認しておきたい。

時期 できごと
2026年1月 羽月隆太郎選手(当時)が指定薬物エトミデート使用の疑いで逮捕
2026年2月 羽月選手が起訴され、球団と契約解除
2026年5月15日 羽月被告が公判で「他にも吸っている選手がいた」と証言
2026年5月28日 羽月被告がTikTokライブで「6人が同じ人物から購入していた」と暴露
2026年6月1日 「売人」とされる滝口涼介被告が逮捕
2026年7月13日 週刊誌「FLASH」が矢野選手と滝口被告の接触を示す写真を報道
2026年7月16日 矢野選手が出場選手登録を抹消
2026年7月30日 矢野・前川両選手の自宅と選手寮に家宅捜索、前川選手も登録抹消
2026年9月25日 矢野・前川両選手が書類送検

なお、今回矢野・前川両選手に取られた「書類送検」という手続きは、身柄を拘束されたままの「逮捕」とは異なり、任意の捜査を経て事件の記録一式を検察官に送致する手続きを指す。身柄拘束を伴わない分、羽月元選手が経験した逮捕という手続きよりは軽い段階に位置づけられるが、それでも刑事事件としての立件に向けた重要な一歩であることに変わりはない。今後、検察が起訴するかどうかを判断し、起訴されれば公判の場でさらに詳しい事実関係が明らかになっていくことになる。

検察の判断としては、正式に裁判を開く「起訴」、比較的軽微な事案で書面審理のみで罰金等を科す「略式起訴」、そして事情を考慮して起訴を見送る「不起訴(起訴猶予を含む)」の3パターンが考えられる。関与の程度や使用の頻度、本人の認否といった要素によって結論は大きく変わり得るため、現時点でどの判断が下されるかを予測することはできない。羽月元選手のケースは正式裁判を経て有罪判決(執行猶予付き)という結果になっているが、矢野・前川両選手が同様の道をたどるのか、あるいは異なる判断が下されるのかは、今後の検察の捜査と判断を待つほかない。

羽月選手は今年1月の逮捕・2月の起訴を経て、拘禁刑1年執行猶予3年(求刑・拘禁刑1年)の判決を受けている。契約解除という球団側の厳しい対応で一区切りがついたかに見えたこの問題だったが、5月の公判での「他にも吸っている選手がいた」という証言、そして同月末のTikTokライブでの「6人が同じ人物から購入していた」という暴露によって、事態は思わぬ方向へ再燃することになった。

6月には「売人」とされる滝口涼介被告が逮捕され、捜査の輪が広がっていることが明らかになる。報道によれば、滝口被告は複数のプロ野球選手とのプライベート写真を持っており、球界と一定の"蜜月"関係にあったとされる人物だ。そして7月13日、週刊誌「FLASH」が矢野選手と滝口被告の接触を示す写真、さらには六本木のバーでの集合写真を報じたことで、球団は事実上の後手対応を迫られた。矢野選手と滝口被告が写った写真がきっかけとなって捜査が本格化したとも見られており、この週刊誌報道こそが、今回の書類送検に至る決定的な転機だったと言えるだろう。矢野選手は写真報道からわずか3日後の7月16日に登録抹消。さらに2週間後の7月30日には、矢野・前川両選手の自宅と選手寮に家宅捜索が入り、前川選手も同日付で登録抹消されている。そこから約2か月を経た9月25日、両選手の書類送検という形で、この問題は新たな局面を迎えた。

一連の経緯を振り返ると、球団が自主的に問題を把握し公表したのではなく、いずれも週刊誌報道や捜査の進展という"外圧"によって後追いで対応せざるを得なかった構図が浮かび上がる。球団の初期対応の鈍さについては、ファンからも「危機意識のなさ」「甘いぬるま湯体質」といった厳しい声が上がっており、選手個人の問題にとどまらず、球団のガバナンス自体が問われる事態になっている。

家宅捜索が発表された7月30日、球団は「心よりお詫び申し上げます」とのコメントを発表。新井貴浩監督も「ご迷惑をおかけして申し訳ない」と陳謝し、松田オーナーも「申し訳ない」との言葉を残している。翌31日、矢野・前川両選手は広島市南区の球団事務所で鈴木清明球団本部長と面談したことが確認されている。ただし両選手とも報道陣の取材には応じず、前川選手は無言のまま球団事務所を後にし、矢野選手も同様に言葉を発することはなかった。

そして9月25日の書類送検を受け、鈴木球団本部長は取材に対し「コメントすることはない」とだけ述べている。7月末の家宅捜索時点では謝罪の言葉を発していた球団だが、書類送検という次の段階に進んだ今回は一転して沈黙を選んだ格好だ。刑事手続きが進行中であることを踏まえた慎重な対応とも取れるが、当事者からの直接の説明がないまま事態だけが進んでいく状況に、もどかしさを感じるファンも少なくないだろう。

矢野雅哉のプロフィール

矢野雅哉は1998年12月16日生まれ、大阪府出身の内野手。育英高校から亜細亜大学を経て、2020年のドラフト会議で広島東洋カープから6位指名を受けプロ入りした。契約金2500万円、年俸600万円での入団だった。投打は右投左打。

ルーキーイヤーの2021年、矢野はオープン戦から内野手として起用され、出場した全13試合を無失策で乗り切るという守備力の高さを見せつけ、その評価を武器に開幕一軍を勝ち取った。とはいえ実戦での打席数はわずか6打数にとどまり、この年はまだ「守備固めの若手」という立ち位置だった。

2022年・2023年も出場機会は徐々に増えていったものの、打率.194、.185と、打撃面での結果にはなかなか結びつかなかった。それでも堅実な守備力への評価は着実に高まっていき、2024年、ついに自己最多となる137試合に出場。遊撃のレギュラーに定着し、打率.260・OPS.655という自己ベストの打撃成績を残すとともに、自身初のゴールデングラブ賞に輝いた。守備一本で這い上がってきた選手が、球界を代表する守備の栄誉を勝ち取った瞬間であり、まさに苦労人のブレークと呼ぶにふさわしいシーズンだった。

矢野雅哉のこれまでの成績

年度 試合数 打率 打数 安打数 HR 打点 盗塁 出塁率 長打率
2021年 13 .000 6 0 0 0 0 .000 .000
2022年 55 .194 67 13 2 5 0 .280 .284
2023年 93 .185 119 22 0 3 7 .269 .202
2024年 137 .260 430 112 2 38 13 .322 .333
2025年 112 .208 284 59 1 19 2 .288 .246
2026年 44 .167 48 8 1 5 2 .268 .229
通算 454 .224 954 214 6 70 24 .298 .280

2024年のブレークシーズンを経て迎えた2025年は、打率.208・OPS.534と数字を落とし、レギュラーの座を脅かされる苦しいシーズンとなった。112試合に出場しながらも本塁打1・打点19にとどまり、前年のブレークが一過性のものだったのではという懸念も一部で囁かれ始めていた時期だ。

そして問題発覚の2026年は、44試合・48打数に出場した時点で打率.167、7月16日の登録抹消によりシーズンが事実上中断されている。wRC+(リーグ平均を100とする得点創出力指標)も54.2にとどまっており、2024年の輝きからは程遠い数字での中断となった。本来であれば、2024年の実績を取り戻せるかどうかが今季の焦点だったはずが、シーズン半ばでグラウンド外の問題によってその機会自体が絶たれる形となった。ゴールデングラブ賞に輝いた守備力の高さは広島の遊撃陣を支える重要な要素だっただけに、チームにとっても大きな痛手であることは間違いない。

わずか58打席という小さなサンプルではあるが、2026年の矢野は7四球・17三振とやや三振がかさむ内容で、2024年に見せたコンタクト重視のアプローチからはやや後退した数字だった。守備位置別のイニング数を見ても、2026年の出場171.2回はすべて遊撃で、複数ポジションを兼務する場面はなかった。44試合に出場しながら守備イニングが171.2回にとどまっている点からも、フル出場というよりは途中出場・守備固めでの起用が中心だったことがうかがえ、2024年のようなレギュラーとしての立ち位置からは後退していたことが分かる。もっとも、これはシーズン中断前のごく限られたデータであり、本来の実力を測るには不十分なサンプルであることは付け加えておきたい。

前川誠太のプロフィール

前川誠太は2003年4月4日生まれ、京都府京都市出身の内野手。投打は右投右打。福井県の強豪・敦賀気比高校でプレーし、甲子園出場を経験した。3年夏には全国8強まで勝ち上がっており、全国屈指の激戦区を勝ち抜いてきた実績を持つ。甲子園出場経験のある父親を目標にしてきたといい、親子二代にわたる甲子園の舞台での戦いを経て、2021年のドラフト会議で育成選手2位として広島東洋カープに入団した。

育成選手としてプロ入りしてから支配下登録まで、前川は3年半以上の時間を要している。派手な実績があったわけではないが、高いコンタクト力を評価され、粘り強く二軍でアピールを続けてきた選手だ。2025年7月末、ついに念願の支配下契約を勝ち取ると、翌8月にはプロ初安打を記録。育成という決して恵まれたスタートではない立場から、一軍の舞台に自らの力で這い上がってきた矢先の出来事だった。

前川誠太のこれまでの成績

年度 試合数 打率 打数 安打数 HR 打点 盗塁 出塁率 長打率
2025年 28 .185 54 10 0 9 0 .214 .241
2026年 25 .095 21 2 0 2 0 .208 .095
通算 53 .160 75 12 0 11 0 .213 .200

支配下1年目の2025年は28試合・54打数で打率.185、まだ一軍の投手に対応しきれていない様子がうかがえる内容だった。それでも本塁打こそないものの9打点を記録するなど、勝負強さの片鱗を見せる場面もあった。

そして2026年、25試合・21打数の出場にとどまり、打率.095・OPS.303と結果を残せないまま、7月30日の登録抹消でシーズンが中断している。通算でも75打数12安打・打率.160、長打はまだ一本もない。2026年の25打席では3四球・6三振と、こちらも三振が先行する内容だった。数字だけを見れば、まだプロとして結果を残す以前の、経験を積んでいる最中の選手だと言える。支配下登録を勝ち取り、ようやく一軍の舞台に立ち始めたばかりの23歳にとって、今回の一件がキャリアに与える影響は決して小さくないだろう。育成出身選手にとって、一度失った信頼を取り戻すハードルは、生え抜きの支配下選手以上に高いものになりかねない。

今後への影響

書類送検という段階は、あくまで捜査機関が事件を検察に送る手続きであり、起訴するかどうかの判断は検察に委ねられている。今後の起訴・不起訴の判断、そしてそれを受けた球団としての処分は、いずれも今回の書類送検とは別途下されることになる。前例となる羽月元選手のケースでは、逮捕から起訴、そして球団による契約解除という経緯をたどっている。矢野・前川両選手についても、今後の司法手続きの推移と、それを受けた球団の対応が大きな焦点になるだろう。

すでに矢野は7月16日、前川は7月30日の時点で登録抹消されており、事実上今シーズンのプレーは絶たれている状態だ。ゴールデングラブ賞経験者である矢野の遊撃守備、そして支配下を勝ち取ったばかりの前川の将来性は、いずれも広島の中長期的な戦力構想において軽視できない要素だっただけに、チームへの影響は今季だけにとどまらない可能性がある。特に矢野については、2024年に見せたブレークが本物だったのかを見極めるはずだった2025年・2026年という2シーズンを、不振と今回の問題でほぼ丸々失う形になっており、キャリアの分水嶺に大きな影を落とすことになった。

新井貴浩監督の来季続投が決まったばかりの広島にとって、今回の一件はグラウンド外での危機管理という新たな課題を突きつける形となった。今季すでに羽月選手の逮捕という形でシーズン全体に暗い影を落としてきた広島にとって、その"第二波"とも言える今回の書類送検は、チームの体質そのものへの厳しい視線をさらに強めることになりそうだ。羽月選手の逮捕から始まったこの問題が、今回の書類送検で一区切りとなるのか、それとも羽月被告が証言した「6人」のうち、まだ明らかになっていない人物が今後浮上してくるのか、今後の捜査の行方を注視する必要がある。

球団としては、個々の選手への処分だけでなく、なぜこうした問題を自ら把握し公表できなかったのかという、組織としてのガバナンス体制の見直しも求められることになるだろう。ファンから寄せられている「危機意識のなさ」という指摘は、今回の一件が個人の資質の問題だけでなく、球団全体の管理体制の問題でもあることを示唆している。

一連の経緯を見る限り、羽月元選手の周辺には複数の選手が関わっていた可能性が公判の証言の中で示唆されている。今回書類送検された矢野・前川の2人で今回の問題がすべて解明されたのか、それとも今後さらに新たな事実が浮かび上がってくるのか、現時点では見通せない部分も多い。球団としては、今回の書類送検を機に、選手個々への聞き取りや教育体制の強化など、再発防止に向けた抜本的な対応を取ることが求められるだろう。

今季の広島にとって"二重の打撃"となった一連の騒動

2026年の広島は、開幕から一貫して厳しい成績に苦しんだシーズンだった。1月の羽月選手逮捕という衝撃的な形で幕を開けたシーズンは、3年連続のBクラス、そして最下位という結果に終わっている。新井貴浩監督はシーズン中に3度も辞意を球団に伝えていたと報じられており、その都度松田オーナーら球団幹部が慰留し、来季も指揮を執り続けることが決まったばかりだ。

そうした苦しいシーズンの終盤に飛び込んできたのが、今回の矢野・前川両選手の書類送検というニュースだった。羽月選手の一件がシーズン開幕直後のグラウンド外の混乱だったとすれば、今回の書類送検はシーズン終盤、来季に向けたチーム作りが本格化するタイミングでの"第二波"だ。若手・中堅の台頭に期待をかけてきたチームにとって、守備の要だった矢野と、伸び盛りの育成出身選手だった前川を同時に欠く事態は、順位という結果以上に、チームの雰囲気や信頼関係という目に見えない部分への影響も懸念される。

新井監督は就任以来「育成と勝利の両立」というテーマを掲げてきたが、今回の一件は、育成してきた選手が思わぬ形でチームを離れることになりかねないという、皮肉な形でその難しさを突きつけることになった。来季の広島が、グラウンド内での立て直しと同時に、グラウンド外での信頼回復という課題にどう向き合っていくのか、両輪での取り組みが問われることになりそうだ。

この問題は一球団の不祥事にとどまらず、NPB全体でも注視されている。8月3日に開かれたNPB実行委員会では、この件について中村事務局長が「(この日は)報告事項はなかったが、広島球団と事務局は頻繁に連絡を取り合い、報告を受けながらコミッショナーとも情報共有し、捜査の進展を見守っている」との趣旨を説明している。一球団だけの問題として処理するのではなく、リーグ全体としても事態の推移を注意深く見守っている姿勢がうかがえる。

まとめ

ゴールデングラブ賞に輝いた矢野雅哉、支配下契約を勝ち取ったばかりの前川誠太。ともに広島の内野陣を支える存在として期待されていた2人が、指定薬物を巡る問題で書類送検されるという事態に至った。羽月隆太郎元選手の逮捕に端を発した今回の一連の騒動は、1月の逮捕から実に8か月以上を経て、現役選手2人を巻き込む形にまで拡大している。

守備で球界屈指の評価を受けた矢野、育成出身から支配下を勝ち取った前川――ともに"苦労人"として這い上がってきたキャリアだっただけに、今回の一件がその努力に水を差す結果になったことは、多くのファンにとっても残念な出来事だろう。一方で、指定薬物という重大な法規制に関わる容疑である以上、感情論だけで済ませられる問題でないことも事実だ。

2人が置かれている状況には、それぞれ異なる重みがある。27歳の矢野は、すでにゴールデングラブ賞という実績を積み上げたベテランの域に差し掛かりつつある選手であり、今回の一件がキャリアの晩年に近い時期での大きなつまずきになりかねない。一方23歳の前川は、育成から支配下、そしてプロ初安打とキャリアを積み上げ始めたばかりの段階での出来事であり、今後どれだけ長い現役生活を送るとしても、今回の一件は常について回ることになる。世代もキャリアのステージも異なる2人が、同じ問題に同時に巻き込まれたという事実そのものが、今回のスキャンダルの根深さを物語っていると言えるだろう。

書類送検はあくまで刑事手続きの一段階に過ぎず、今後検察がどのような判断を下すのか、そしてそれを受けて球団がどのような処分を下すのかは、依然として不透明な部分が多い。今後の司法手続きの行方とともに、球団としての管理体制の見直しが、来季以降の広島にとって避けて通れない課題になりそうだ。

グラウンド上での実績と、グラウンド外での行動は、本来切り離して評価されるべきものではない。ゴールデングラブ賞という栄誉も、育成から掴み取った支配下契約という努力の証も、指定薬物への関与という一点によって大きく揺らいでしまう――今回の一件は、プロ野球選手という公的な立場にある以上、私生活における行動もまた厳しく問われるのだという、当たり前でありながら重い事実を改めて浮き彫りにした。1月の羽月選手の一件から始まったこの問題に、今回で本当に区切りがつくのか。スタジアム通信でも、続報が入り次第あらためてお伝えしたい。

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