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FIPとは?防御率に頼らない投手評価指標をわかりやすく解説

防御率は投手の実力を測る最も基本的な指標だが、実は大きな弱点を抱えている。それは「味方の守備力」という、投手本人にはコントロールできない要素に結果が左右されてしまう点だ。好守に恵まれれば防御率は良く見えるし、拙守が続けば実力以上に防御率が悪化することもある。この弱点を克服するために生まれたのが「FIP」だ。npbscholar.comでも投手評価の軸として使われるFIPについて、その仕組みと読み方を詳しく解説する。

FIPとは何か

FIP(Fielding Independent Pitching、守備に依存しない投球指標)は、投手が「守備の助けを一切借りずに、自分自身の力だけでコントロールできる結果」だけをもとに算出される指標だ。具体的には、本塁打・与四球・与死球・奪三振の4つだけを材料に計算される。
なぜこの4つなのかというと、これらはすべて守備側の動きが介在しない、投手と打者の1対1の結果だからだ。本塁打はフェンスを越えた時点で守備が関与できないし、四球・死球・三振もボールがフェアグラウンドに飛ばない結果である。逆に、内野安打になるかゴロアウトになるか、鋭い打球が野手の正面を突くか間を抜けるかといった結果は、守備力や運に大きく左右されるため、FIPの計算には含まれない。

FIPの計算式

FIPの計算式は次のようになる。
FIP=((13×本塁打+3×(与四球+与死球)-2×奪三振)÷投球回)+FIP定数
本塁打には13倍という最も重い係数がかけられており、四球・死球には3倍、奪三振には守備に頼らず自力でアウトを取れることを評価してマイナス2倍(つまり数値を下げる方向)の係数が使われる。最後に足される「FIP定数」は、その年のリーグ全体のFIP平均値が、リーグ全体の防御率平均値とだいたい同じ数字になるように調整するための補正値で、シーズンごとに算出し直される(近年のNPB・MLBではおおむね3.0〜3.2程度で推移することが多い)。

実際に数字を入れて計算してみる

ある投手がシーズンで投球回150、被本塁打15、与四球40、与死球5、奪三振150を記録したとする。FIP定数を3.10とすると、計算式は((13×15+3×(40+5)-2×150)÷150)+3.10となる。分子は195+135-300=30なので、30÷150=0.20。これに定数3.10を足すと、FIPは3.30という数字になる。もしこの投手の実際の防御率が2.80だったとすれば、「FIPより防御率がかなり良い=味方の好守備や運に助けられている可能性がある投手」と読み取れる。逆に防御率が3.90だったとすれば、「内容は悪くないのに結果に結びついていない、不運な投手」という評価になる。

防御率とFIPを見比べることで分かること

FIPの最大の使い道は、防御率との「差」を見ることにある。
防御率とFIPの数値がほぼ同じであれば、「実力通りの結果が出ている投手」と判断できる。防御率がFIPよりも大幅に良い(数値が低い)場合は、「味方の好守備やBABIPの運に助けられている投手」の可能性が高く、今後防御率が悪化していくリスクがあると読まれる。逆に、防御率がFIPよりも大幅に悪い(数値が高い)場合は、「本来の実力ほど結果が出ていない、拙守や不運に泣かされている投手」であり、今後防御率が改善していく可能性が高いと期待できる。
このように、FIPは「今の防御率がどこまで信頼できる数字なのか」を判断するための重要な物差しになる。

FIPの数値の目安

FIPは防御率と似た感覚のスケール(2点台〜4点台)で表示されるため、防御率と同じ感覚で読むことができる。目安としては、2点台前半なら球界トップクラスのエース級、2点台後半〜3点台前半なら好投手、3点台後半〜4点台前半でリーグ平均程度、4点台後半以上になると苦しい内容という評価になりやすい。ただし年度やリーグ全体の投高打低・打高投低の傾向によって基準は変動するため、あくまで同じ年・同じリーグの投手同士で比較するのが基本になる。

FIP定数はなぜ必要なのか

FIPの計算式の後半に登場する「FIP定数」は、単なる帳尻合わせのように見えるかもしれないが、実は重要な役割を持っている。本塁打・四球・死球・三振だけを使って計算した数字は、そのままでは防御率とスケール(桁の大きさ)が合わない。そこでリーグ全体のFIP平均が、その年のリーグ全体の防御率平均とほぼ一致するように定数を調整することで、ファンにとって馴染み深い防御率と同じ感覚でFIPの数字を読めるようにしている。この定数はリーグ・年度によって変動するため、FIPを比較する際も同じ年・同じリーグの投手同士で見るのが基本になる。

xFIP・SIERAとの違い(発展形の指標)

FIPをさらに発展させた指標として「xFIP」がある。xFIPは、被本塁打の数字をそのまま使うのではなく、投手が許したフライボールの数に、その年のリーグ平均本塁打率を掛け合わせた「期待値」に置き換えて計算する。これは、被本塁打数が球場のサイズや年ごとの飛びやすさ(いわゆる"飛ぶボール"問題)にも影響されるため、それらの外的要因をさらに取り除こうという狙いがある。
また「SIERA(シエラ)」は、ゴロ・フライ・ライナーの割合や、四球・奪三振の比率などをより複雑に組み合わせて、将来の防御率をより精度高く予測しようとする指標だ。FIPよりも計算は複雑になるが、その分、投手の"質"をより多角的に評価できるとされている。まずはFIPの考え方を理解しておけば、これらの発展指標もスムーズに理解できるようになる。

npbscholar.comでのFIPの見方

npbscholar.comでは、投手の年度別成績にFIPが並記されており、防御率との差を一目で比較できるようになっている。防御率が良くてもFIPが大きく上回っている(悪い)投手は、「守備や運に恵まれているだけかもしれない」と一歩引いた見方ができるし、逆に防御率が今ひとつでもFIPが優れている投手は、「まだ伸びしろがある」「不運が続いているだけ」と評価を上方修正する材料になる。先発ローテーションの評価や、今後の起用を予測する際にも参考になる指標だ。

FIPの数値目安一覧

FIPの目安 評価
2.50未満 球界トップクラスのエース級
2.50〜2.99 好投手
3.00〜3.49 平均よりやや上の投手
3.50〜4.00前後 リーグ平均程度
4.00〜4.49 平均をやや下回る投手
4.50以上 苦しい内容が続いている投手

まとめ―防御率の"信頼度"を測るための指標

FIPは、本塁打・四球・死球・三振という、投手が自分の力だけでコントロールできる結果だけを取り出すことで、守備力や運に左右されない"投手本来の実力"を映し出す指標だ。防御率とFIPを見比べれば、その投手の今の成績がどこまで実力に裏付けられたものなのか、それとも運や味方守備に支えられているだけなのかを判断する手がかりが得られる。防御率だけを見て一喜一憂するのではなく、FIPも合わせてチェックする習慣をつけることで、投手評価の精度は大きく向上するはずだ。

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