9月3日時点で5ゲーム差。独走ムードすら漂っていたはずの阪神の首位が、わずか9日で0.5ゲーム差まで押し詰められた。巨人の猛追が語られがちだが、実際にデータを追うと、阪神自身の"失速"の方が主因であることが見えてくる。9月の全チーム成績と試合ログから、その正体を数字で解剖する。
9月の6球団成績、阪神は打率もチーム最下位
まず9月に入ってからの全チーム成績を見てみよう。
| チーム | 試合 | 勝敗 | 勝率 | 得点 | 失点 | 打率 | 先発防御率 | 救援防御率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| DeNA | 9 | 7-2 | .778 | 43 | 17 | .267 | 1.79 | 1.46 |
| 巨人 | 9 | 7-2 | .778 | 33 | 18 | .238 | 1.29 | 1.71 |
| 中日 | 9 | 3-5-1 | .375 | 29 | 35 | .230 | 3.60 | 2.51 |
| ヤクルト | 9 | 3-5-1 | .375 | 28 | 48 | .248 | 4.90 | 4.55 |
| 広島 | 9 | 3-6 | .333 | 26 | 39 | .202 | 4.06 | 7.36 |
| 阪神 | 7 | 2-5 | .286 | 20 | 22 | .222 | 4.11 | 1.38 |
阪神の9月の勝率.286は6球団中最下位。チーム打率.222も最下位で、リーグ平均を大きく下回っている。一方で興味深いのは得失点差だ。20得点22失点、差はわずか-2。決して「大崩れ」と呼べるほど失点が嵩んでいるわけではない。むしろ問題は明確に打線側にある。
4連敗、その間の得点はわずか"1試合平均1点"
試合ごとのスコアを追うと、失速の分岐点がはっきり見えてくる。
| 日付 | 対戦 | 結果 | スコア |
|---|---|---|---|
| 9/1 | ヤクルト(神宮) | ○ | 6-2 |
| 9/2 | ヤクルト(神宮) | ● | 3-5 |
| 9/3 | ヤクルト(神宮) | ○ | 7-4 |
| 9/5 | DeNA(甲子園) | ● | 2-3 |
| 9/6 | DeNA(甲子園) | ● | 1-4 |
| 9/9 | 広島(甲子園) | ● | 1-3 |
| 9/12 | 巨人(東京ドーム) | ● | 0-1 |
神宮での3連戦を6-2、3-5、7-4で乗り切り、ゲーム差5をつけたのがまさに9月3日。しかしこれが今のところシーズン最後の白星となっている。9月5日以降、雨天中止(9/8、9/10)を挟みながらも実際に消化した4試合はすべて敗戦。しかもその4試合の得点は2、1、1、0とわずか合計4点、1試合平均1点というレベルまで得点力が枯渇している。失点は3、4、3、1と決して悪くない内容だっただけに、打線の沈黙がそのまま連敗に直結した形だ。
打撃陣は全体的に湿りがち。特に正捕手・坂本誠志郎が19打数0安打
チーム打率.222の内訳を個人成績で見ると、誰が湿っているのかが浮き彫りになる。
| 選手 | 打率 | 本塁打 | 打点 |
|---|---|---|---|
| 佐藤輝明 | .310 | 5 | 8 |
| 大山悠輔 | .321 | 0 | 2 |
| 中野拓夢 | .259 | 0 | 1 |
| 近本光司 | .250 | 1 | 3 |
| 森下翔太 | .208 | 2 | 4 |
| 前川右京 | .182 | 0 | 1 |
| 元山飛優 | .158 | 0 | 0 |
| 坂本誠志郎 | .000 | 0 | 0 |
とりわけ深刻なのが正捕手・坂本誠志郎の状態だ。9月はここまで19打数0安打。先発マスクをほぼ坂本が独占しており、8番打者としての"貯金"がまったく機能していない。守備の要である捕手が完全に沈黙していることは、打線のつながりという点でも小さくない影響がある。
さらに大山悠輔の.321という打率は一見悪くないが、本塁打0・打点2という内容が示す通り、単打止まりで長打がまったく出ていない。中軸の森下翔太も.208・本塁打2に沈み、下位に流れを送れていない。チームの得点源として機能しているのは事実上、5本塁打・8打点をマークする佐藤輝明ひとりという状態で、"一人で戦っている"状態が続いている。
投手陣は崩れていない──救援防御率1.38はリーグトップ級
ここで強調しておきたいのは、阪神の投手陣は決して崩壊していないという点だ。先発防御率4.11こそ平均を上回る数字ではないが、救援防御率は1.38と、掲載した6球団の中でも際立って優秀な数字を残している。得失点差が-2にとどまっているのは、まさにこのブルペン陣の踏ん張りによるところが大きい。今回の失速は投手力の問題ではなく、明確に「打線が援護できていない」ことに起因していると言っていいだろう。
巨人の"異常な"投手陣も見逃せない
一方で、追いかける巨人の9月の数字にも触れておく必要がある。巨人は9試合で先発防御率1.29、救援防御率1.03という、ほぼ隙のない投手陣を披露しており、打率.238とチーム打撃自体は阪神と大差ない水準ながら、圧倒的な投手力で7勝2敗をマークしている。つまり今回のゲーム差縮小は、「阪神打線の枯渇」と「巨人投手陣の絶好調」という、両チームの対照的な状態が重なって生まれた現象だ。どちらか一方だけの要因ではない。
総括──"守り"は保てている、鍵は打線の目覚め
5ゲーム差から0.5ゲーム差への急落は、投手陣の崩壊によるものではない。むしろ救援防御率1.38という数字が示す通り、守りの部分は依然として機能している。問題はチーム打率.222、そして8月に8本塁打を放った正捕手が19打数0安打に沈むという打線側の不振ぶりだ。佐藤輝明以外の得点源が復調するかどうかが、このまま独走を許すのか、それとも再びゲーム差を広げ返せるのかを左右する最大の鍵になる。ペナントレースはまだ終わっていない。