阪神タイガースが2年連続のセ・リーグ優勝を決めた今季。チームを牽引した選手の中から、セ・リーグMVPを誰が手にするのかに注目が集まっている。ここでは大本命の佐藤輝明、対抗の高橋遥人を軸に、森下翔太ら他の候補の成績を振り返りながら、今季のMVPを予想する。成績は10月5日時点のNPB公式データをもとにしている。
候補者の成績を並べて比較
| 選手 | 区分 | 試合 | 主な成績 | MVP候補としての見どころ |
|---|---|---|---|---|
| 佐藤輝明 | 野手 | 138 | .311/39本/105打点/OPS1.009 | チーム最多本塁打・打点、月間MVP3度 |
| 高橋遥人 | 投手 | 23 | 16勝3敗/防御率1.87/150奪三振 | 最多勝、開幕10連勝 |
| 森下翔太 | 野手 | 140 | .294/35本/84打点/3盗塁 | 35本塁打でチーム2位の本塁打数 |
| 工藤泰成 | 投手 | 56 | 3勝1敗11S/防御率1.07/77奪三振 | ブルペンの要として失点を抑える |
| 村上頌樹 | 投手 | 27 | 10勝9敗/防御率1.85/155奪三振 | 防御率のタイトル獲得 |
| 才木浩人 | 投手 | 25 | 10勝5敗/防御率2.51/175奪三振 | 奪三振数がリーグ上位クラス |
大本命:佐藤輝明―39本塁打・105打点、3度の月間MVPが証明した安定感
佐藤輝明は今季138試合に出場し、打率.311・164安打・39本塁打・105打点。長打率.620、出塁率.389と、打率と長打を高い水準で両立した。本塁打39はチーム最多、打点105もチームトップの数字だ。
数字の推移を見ると、今季の佐藤が一度も失速しなかったことがわかる。3・4月度は27試合で打率.376・7本塁打・25打点。5月は25試合で打率.363・7本塁打・14打点、33安打。そして8月は25試合で打率.330・8本塁打・18打点、32安打と、夏場も打ち続けた。この3度の月間MVP受賞は、今季のセ・リーグの打者の中で最も安定して高いレベルを保ち続けた証と言える。
特に、本塁打を量産しながら出塁率.389を保っていた点は見逃せない。ただ長打を打つだけでなく、走者を置いた場面で勝負できる打者として、打線の中で機能し続けた。阪神の優勝を支えた打の柱として、チーム成績と個人成績が最も直結した選手であることも、大本命とする理由だ。
10月3日の広島戦では3回に3ラン本塁打を放ち、先制点を奪った。チームは4-6で敗れたものの、優勝決定の日まで打線の中心として結果を残し続けた。
佐藤輝明の数字をもう一段深く見る
佐藤の成績で目を引くのは、本塁打と打点の多さに加えて、月ごとの安定感だ。開幕直後の3・4月度は27試合で打率.376・7本塁打・25打点という猛打で、その後も5月度は25試合で打率.363・33安打、8月度は25試合で打率.330・8本塁打・18打点と、月間MVPに選ばれた月は打率と長打が同時に高い水準にあった。
一方で課題も残る。602打席で160三振を記録しており、三振の多さは今季も変わらない数字として残った。長打を量産する打者にとって、三振の多さは切り離せない特徴だが、それでも打率.311を維持したことは、打撃技術の向上を示している。
大本命として推す最大の理由は、この長打力と打率の両立が年間を通じて続いたことだ。特定の数か月だけの爆発ではなく、シーズン全体で打線の中心であり続けた点が、MVP選考において最も大きな評価材料になるだろう。
対抗:高橋遥人―開幕10連勝から16勝、投手で唯一の対抗
高橋遥人は今季9年目で、自身初となる開幕先発ローテーション入りを果たし、開幕から10連勝をマークした。最終的には23試合に登板して16勝3敗、防御率1.87、150奪三振、勝率.842。完投5、完封4と、先発投手としての完成度も極めて高い。
開幕10連勝は、2リーグ制以降の球団初、1947年の御園生崇男の13連勝以来79年ぶりという快挙だった。12球団最速での2桁勝利にも到達し、5月末時点で防御率0.90・7勝という内容は、今季のセ・リーグで最も注目を集めた投球と言える。4月と5月には月間MVPを連続受賞し、3連続受賞にも手をかけた。
防御率では同僚の村上頌樹が1.85と0.02差で上回り、高橋は2位となった。一方で、勝ち星の数字は圧倒的で、リーグ最多勝のタイトルを確定させている。スポーツ紙の取材では、シーズンを通した自身の安定感について語っている。
投手がMVPを受賞するケースは限られているため、大本命の佐藤輝明が優位と見られている。ただし、16勝・防御率1.87・150奪三振という数字は、投手部門の中でも突出している。打者に比べて投手のMVP受賞は限られるものの、今季の阪神の勝利を最も直接的に支えたという点で、対抗の筆頭として挙げられる。
高橋遥人の投球内容を掘り下げる
高橋の今季の数字を、投球の質という観点から見るとどうか。159回を投げて奪三振150、与四球17。9イニングあたりの奪三振は8.5、与四球は1.0と、奪三振と制球を高い水準で両立させている。被安打は123で、与四球の少なさと合わせて走者を出しにくい投球を続けたことがわかる。
先発投手としての完投5・完封4も、シーズンを通じて試合を作り続けた証だ。ブルペン任せにすることなく、長いイニングを投げ切れる投手として、チームの勝ちパターンの起点になっていた。
防御率1.87は、同僚の村上頌樹の1.85にわずかに及ばなかったが、勝ち星の差は16勝対10勝と大きく開いた。投手部門のMVP候補として見たとき、勝利数と奪三振数を同時に高い水準で積み上げた点が、高橋の最大の強みと言える。
もう一人の候補:森下翔太―35本塁打・84打点の長打力
森下翔太は140試合に出場して打率.294・35本塁打・84打点、長打率.561、出塁率.392。チームの中軸として年間を通じてフル稼働し、長打で数字を積み上げた。盗塁は3にとどまるが、35本塁打は今季のチーム2位の数字で、打率.294・長打率.561と長打の質の高さが評価材料になる。
5月20日には0-7のビハインドから終盤に追い上げ、サヨナラ本塁打で勝利を決めた。こうした勝負強さが、一年を通して打線の厚みを支えた。大本命の佐藤輝明と本塁打で並ぶ数字を残し、チームの打線で長打の役割を分け合った。打点84は佐藤の105に次ぐ水準で、得点圏での役割も大きかった。佐藤の打撃の安定感と比べれば見劣りする部分もあるものの、長打力を武器にした候補として入る。
中継ぎ・抑えの候補:工藤泰成―防御率1.07の守護神級
今季の阪神で特に目立ったのが、リリーフの工藤泰成だ。56試合に登板して3勝1敗・11セーブ、防御率1.07。59回を投げて77奪三振、ホールド13を記録した。勝ちパターンでも抑えでも起用されながら、失点の少なさで際立った働きを見せた。
終盤の勝負どころを数字で支えた働きは、チームの優勝に直結した要素であり、投手部門の中でMVP候補として挙げられる一人だ。
その他の候補:村上頌樹、才木浩人、近本光司、中野拓夢、坂本誠志郎
村上頌樹は27試合に登板して10勝9敗、防御率1.85で防御率のタイトルを獲得。155奪三振と先発陣の中心で、高橋とともにチームの投手陣を支えた。才木浩人は25試合で10勝5敗、防御率2.51、175奪三振と奪三振の数で目を引く。
野手では、近本光司が87試合で打率.302・5本塁打・16打点、盗塁12。中野拓夢は140試合に出場して打率.290・146安打を記録した。坂本誠志郎は97試合で打率.197・10本塁打・36打点と、打撃では苦しんだ一方で捕手としての役割を担った。いずれも優勝に貢献したものの、MVP候補としては大本命・対抗の数字に一歩及ばない。
優勝を支えた脇役たち―近本・中野の1、2番と坂本の捕手役
数字の上でMVP候補の中心に入るわけではないが、チームの優勝を支えた選手も見逃せない。近本光司は87試合で打率.302、盗塁12を記録し、出塁と走塁で打線の起点として機能した。中野拓夢は140試合すべてに近い出場を果たし、146安打を積み上げた。チームの安定した得点力は、1番と2番の出塁の積み重ねがあってこそ成立したものだ。
坂本誠志郎は97試合で打率.197ながら10本塁打・36打点を記録した。打撃の数字だけを見ると物足りない部分もあるが、捕手として投手陣をリードし、投手陣の好成績を支えた役割は大きい。高橋・村上・才木が揃って好成績を残したシーズンにおいて、捕手の存在は数字では測りにくいが重要な要素だった。
こうした選手たちの活躍は、MVPの票を大きく動かすほどではないかもしれないが、チームの連覇を語る上で欠かせない要素と言える。
工藤泰成の働きを改めて見る
工藤泰成の今季は、中継ぎとしての登板数の多さと、失点を抑える投球の安定感が特徴だ。56試合に登板し、防御率1.07。59回で77奪三振という数字は、ブルペン投手として非常に高い水準にある。ホールド13、セーブ11と、勝ちパターンでも抑えでもチームの勝利を守った。
中継ぎ投手がMVPに選ばれるケースは稀だが、チームの勝ちを守る役割を年間通して担った投手として、今季の阪神の投手陣の中で存在感を放った。ブルペンの柱として安定した数字を残したことで、投手部門の候補の一人として評価の対象になりうる。
MVP選考で問われるポイント
セ・リーグMVPは、主に記者による投票で決まるとされる。その中で評価の軸となるのは、個人成績の数字とチームの優勝への貢献度の両方だ。打者の場合は本塁打・打点・打率といった打撃部門の成績が、投手の場合は勝ち星・防御率・奪三振などの成績が比較されやすい。
今季の阪神は、打線と投手陣がともに高い水準にあったため、打者と投手のどちらを選ぶかという判断が難しい。佐藤のような打者は、年間を通じた安定感と本塁打数で優位に立つ。高橋のような投手は、勝ち星と防御率の両立で評価される。MVP候補として、どちらの評価軸を重視するかで結果は変わる可能性がある。
予想の前提と今後の注目点
今回の予想は、レギュラーシーズン終了時点の数字をもとにしている。MVPの評価はシーズン全体の成績が基本となるため、クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージの結果が個人成績に加算されるわけではない。ただし、CSで活躍した選手の印象がMVPの議論に影響する可能性は否定できない。
阪神は10月14日から始まるファイナルステージに進出し、日本シリーズへの切符をかけて戦う。大本命の佐藤輝明と対抗の高橋遥人がポストシーズンでどんな働きを見せるかは、MVP論争の行方にも関わってくるはずだ。
MVP予想の結論
大本命は佐藤輝明。3度の月間MVPを含め、年間を通して打棒を落とさず、本塁打・打点・打率・出塁率のいずれも高い水準で、チームの打の柱として優勝を支えた。対抗は高橋遥人。16勝・防御率1.87・150奪三振と、投手として最も評価される成績を残した。
森下翔太の35本塁打、工藤泰成の守護神級の働き、村上頌樹・才木浩人の先発の安定感も評価の材料となるが、MVPは打者か投手かの議論を含めて最終的な票の動向が注目される。MVPの選考は例年シーズン終了後に行われるため、今後の発表を注目したい。