2026年度の沢村賞の選考委員会が10月26日、都内で開かれ、阪神の高橋遥人投手(30)が初めて選ばれた。今季は23試合に登板して16勝3敗、防御率1.87、5完投(4完封)、150奪三振の成績を残し、最多勝と最高勝率のタイトルを獲得。阪神の投手が沢村賞を受賞するのは、2003年の井川慶以来23年ぶりとなる。トミー・ジョン手術を含む5度の手術を乗り越えた左腕が、「投手最高の栄誉」にたどり着いた。
この記事では、選考の経緯と最後まで名前が挙がった有力候補を紹介したうえで、高橋のプロ入りからの歩みと、今季の成績を振り返る。
沢村賞に高橋遥人 選考委員4人の意見が一致
選考委員長の堀内恒夫氏(元巨人)によると、選考の場で名前が挙がったのは阪神の高橋、村上頌樹、才木浩人と、ヤクルトの山野太一の4人だった。このうち選考基準の7項目中4項目をクリアした高橋、村上、山野の3人に絞られ、最終的には委員4人が高橋で一致したという。
堀内委員長は「4人とも高橋でいいんじゃないかと。勝ち星、勝率、防御率が大きなウエートを占めている」と説明した。16勝、勝率.842という数字に加え、防御率1.87の安定感が評価の決め手になった。
沢村賞は1947年に制定された、その年に最も活躍した先発完投型の投手に贈られる賞で、1989年からはセ・パ両リーグの投手が対象になっている。正賞の金杯と副賞の300万円が贈られる。
沢村賞の選考基準7項目と高橋のクリア状況
現在の沢村賞の選考基準は、次の7項目だ。
- 登板数:25試合以上(高橋は23試合)
- 完投数:8試合以上(5試合)
- 勝利数:15勝以上(16勝)…クリア
- 勝率:6割以上(.842)…クリア
- 投球回:180回以上(159回)
- 奪三振:150以上(150)…クリア
- 防御率:2.50以下(1.87)…クリア
高橋がクリアしたのは勝利数、勝率、奪三振、防御率の4項目。登板数、完投数、投球回は届かなかったが、昨年受賞した日本ハムの伊藤大海が3項目のクリアだったことを考えれば、十分に受賞の水準に達していたと言える。奪三振はちょうど150で、基準にぴたりと届いた。
他の有力候補 村上頌樹・山野太一・才木浩人
選考の場で名前が挙がった4投手の今季の成績を、選考基準と並べて比べてみる。
| 投手 | 球団 | 登板 | 完投 | 勝利 | 勝率 | 投球回 | 奪三振 | 防御率 | クリア項目 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 選考基準 | 25以上 | 8以上 | 15以上 | .600以上 | 180以上 | 150以上 | 2.50以下 | ||
| 髙橋遥人 | 阪神 | 23 | 5 | 16 | .842 | 159 | 150 | 1.87 | 4項目 |
| 村上頌樹 | 阪神 | 27 | 2 | 10 | .526 | 180 1/3 | 155 | 1.85 | 4項目 |
| 山野太一 | ヤクルト | 25 | 0 | 12 | .750 | 162 1/3 | 152 | 2.33 | 4項目 |
| 才木浩人 | 阪神 | 25 | 1 | 10 | .667 | 154 | 175 | 2.51 | 3項目 |
村上頌樹(阪神)―防御率1.85で最優秀防御率、投球回180回超え
同じ阪神の村上は、27試合に登板してリーグ最多の180回1/3を投げ、防御率1.85で最優秀防御率のタイトルを獲得した。防御率は高橋をわずか0.02上回り、登板数、投球回、奪三振、防御率の4項目をクリアした。ただし、勝ち星は10勝9敗と白星に恵まれず、勝率は.526にとどまった。「勝ち星、勝率、防御率」を重視した選考では、勝利数と勝率の差が高橋との明暗を分けた形だ。
山野太一(ヤクルト)―12勝4敗、防御率2.33
ヤクルトの山野は25試合に登板して12勝4敗、防御率2.33、152奪三振。登板数、勝率、奪三振、防御率の4項目をクリアした。チームが5位に沈むなかで12勝を挙げ、勝率.750を残したが、完投はなく、投球回も162回1/3と基準には届かなかった。
才木浩人(阪神)―候補最多の175奪三振
才木は25試合で10勝5敗、防御率2.51。175奪三振は候補4人の中で最も多く、登板数、勝率、奪三振の3項目をクリアした。防御率は基準の2.50にわずか0.01届かなかった。阪神からは高橋、村上、才木と3人の先発投手が候補に名を連ね、リーグ連覇を果たした投手陣の層の厚さを示した。
パ・リーグの投手は届かず
パ・リーグでは、西武の平良海馬が防御率1.36でリーグトップ、日本ハムの北山亘基が13勝3敗、勝率.813を記録した。ただし、平良は12勝、146回、141奪三振、北山は147回2/3、139奪三振と、いずれも基準の項目を多くはクリアできず、選考の場で名前は挙がらなかった。
高橋遥人のプロフィール
- 生年月日:1995年11月7日(30歳)
- 出身:静岡県静岡市
- 経歴:常葉橘高-亜細亜大-阪神(2018年~)
- 投打:左投左打
- 身長・体重:181センチ、82キロ
- ドラフト:2017年ドラフト2位(阪神)
- 背番号:29
- 通算成績(7シーズン):80登板 37勝23敗 防御率2.50
中学3年時に全国中学大会で優勝し、常葉橘高では2年夏に甲子園に出場。亜細亜大を経て、2017年のドラフト2位で阪神に入団した。
プロ入りからの歩み 5度の手術を乗り越えて
2018~2021年:先発の一角として期待を集める
1年目の2018年に6試合で2勝を挙げ、2年目の2019年は19試合に登板して109回2/3を投げ、125奪三振を記録した。2020年は12試合で5勝4敗、防御率2.49。2021年は7試合の登板ながら2完封を含む4勝2敗、防御率1.65と、出場すれば圧倒的な投球を見せ、阪神の将来のエース候補と呼ばれた。
2022~2023年:トミー・ジョン手術と育成契約
しかし、ここから長い故障との戦いが始まる。2021年に左肘のクリーニング手術を受け、2022年4月には左肘内側側副靱帯再建術(トミー・ジョン手術)に踏み切った。2023年6月には左尺骨短縮術と左肩関節のクリーニング手術を受け、2年続けて一軍登板なしに終わる。同年11月には育成選手として再契約し、背番号は129に変わった。
2024~2025年:支配下復帰とリハビリ登板
2024年7月に支配下登録に復帰し、背番号29も戻ってきた。同年は5試合で4勝1敗、防御率1.52と結果を残し、11月には尺骨短縮術後の骨内異物の除去手術を受けた。これで5度目の手術となった。2025年も8試合で3勝1敗、防御率2.28。登板数を慎重に管理しながら、復活への準備を進めた。
高橋遥人の年度別成績
| 年度 | 登板 | 勝利 | 敗戦 | 完投 | 完封 | 勝率 | 投球回 | 被安打 | 奪三振 | 与四球 | 防御率 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2018年 | 6 | 2 | 3 | 0 | 0 | .400 | 34 2/3 | 34 | 27 | 14 | 3.63 |
| 2019年 | 19 | 3 | 9 | 0 | 0 | .250 | 109 2/3 | 115 | 125 | 38 | 3.78 |
| 2020年 | 12 | 5 | 4 | 1 | 0 | .556 | 76 | 67 | 75 | 17 | 2.49 |
| 2021年 | 7 | 4 | 2 | 2 | 2 | .667 | 49 | 30 | 55 | 5 | 1.65 |
| 2022年 | 一軍登板なし | ||||||||||
| 2023年 | 一軍登板なし | ||||||||||
| 2024年 | 5 | 4 | 1 | 0 | 0 | .800 | 29 2/3 | 20 | 28 | 4 | 1.52 |
| 2025年 | 8 | 3 | 1 | 0 | 0 | .750 | 43 1/3 | 38 | 48 | 8 | 2.28 |
| 2026年 | 23 | 16 | 3 | 5 | 4 | .842 | 159 | 123 | 150 | 17 | 1.87 |
| 通算 | 80 | 37 | 23 | 8 | 6 | .617 | 501 1/3 | 427 | 508 | 103 | 2.50 |
通算成績は80登板で37勝23敗、防御率2.50。今季の16勝だけで、それまでの6シーズンで挙げた21勝に迫る数字だ。
2026年シーズンの振り返り 開幕10連勝と3か月連続月間MVP
開幕2戦目となった3月28日の巨人戦では、9回を投げ切って3安打無失点。ここから白星を重ね、球団では79年ぶりとなる開幕10連勝を記録した。3・4月、5月、6月と、セ・リーグの投手では初めて3か月連続で月間MVPを受賞している。
シーズン通算では23試合に登板して16勝3敗、勝率.842、防御率1.87。159回を投げて与えた四球はわずか17で、WHIP(1イニングあたりに許した走者の数)は0.88、奪三振150は与四球の約9倍にあたる。5完投、4完封と長いイニングを投げ切る力も示し、最多勝と最高勝率の2冠に輝いた。防御率は村上に0.02及ばずリーグ2位だった。阪神のリーグ連覇は、高橋の復活なしには語れない。
高橋遥人のコメント
受賞を受けて、高橋は「こんなにもすごい賞を受賞できて、本当にうれしいです」と喜びを語った。最も印象に残る登板には、開幕2戦目の巨人戦を挙げ、「9イニング、自分がまた投げられたことが本当にうれしかった。監督が最後までいかせてくださったおかげです」と振り返った。
長いリハビリの日々については、「もうダメなのかなと思う時は、何度もありました」と明かしたうえで、「本当に、周りの人に感謝しかありません。本当に頑張ってきて良かったです」と話した。
まとめ
2026年の沢村賞は、16勝3敗、防御率1.87の阪神・高橋遥人が受賞した。選考基準7項目のうち4項目をクリアし、同じく4項目をクリアした村上頌樹、山野太一を抑えた。決め手は勝ち星、勝率、防御率の3つ。阪神の投手としては2003年の井川慶以来、左腕では2020年の大野雄大(中日)以来の受賞となった。5度の手術、育成契約という苦しい時期を乗り越えた30歳の左腕は、来季も阪神のエースとして期待がかかる。
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出典
・沢村賞に阪神・高橋遥人 5度の手術乗り越え「投手最高の栄誉」 基準7項目中4つクリア|スポーツ報知
・阪神・高橋が沢村賞受賞に喜び「もうダメかなと思った」も「まわりの人に感謝しかありません」|デイリースポーツ
・髙橋遥人 個人年度別成績|NPB.jp 日本野球機構
・2026年度 セントラル・リーグ 個人投手成績|NPB.jp 日本野球機構
・2026年度 パシフィック・リーグ 個人投手成績|NPB.jp 日本野球機構