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筒香嘉智、6月までと7月以降で別人――OPS.659から.969への変貌をデータで徹底分析

DeNA・筒香嘉智の今季は、まるで別人のような前半戦と後半戦に分かれている。6月30日までと7月1日以降の成績を比較すると、OPSが.659から.969へと跳ね上がる劇的な変化が起きていた。単なる調子の波では片付けられないこの変貌の正体を、詳細なデータから読み解く。

6月まで vs 7月以降――数字で見る別人ぶり

指標 〜6月30日(40試合) 7月1日〜(59試合)
打率 .220 .285
出塁率 .333 .384
長打率 .326 .585
OPS .659 .969
本塁打 3本 17本
wRC+(9月15日時点) 106 203
Bat WAR(9月15日時点) 0.5 2.6

7月以降の59試合で放った本塁打は17本。試合数は6月までの1.5倍ほどだが、本塁打は3本から5倍以上に増えた。長打率は.326から.585へと大きく上がり、最終的にシーズン通算でも打率.260、20本塁打、OPS.848まで数字を戻している。9月15日時点の集計では、wRC+(リーグ平均を100とした打撃貢献度)も106から203へと倍増しており、平均的な打者から球界屈指の強打者へと変貌したことが数字からも明確に読み取れる。

月別成績に見る"どん底"からの反転

実は7月以降の好調は、ある日を境に突然始まったわけではない。月別成績を見ると、5月に深刻な不振の底を経験していたことが分かる。

月 打率 本塁打 OPS
3月 .500 1 1.556
4月 .350 1 1.050
5月 .109 1 .432
6月 .224 0 .577
7月 .288 4 1.002
8月 .292 8 1.045
9月 .276 5 .875
10月 .286 0 .929

開幕直後こそ好調だったものの、5月は打率.109・OPS.432という深刻な不振に陥り、6月もOPS.577と本塁打ゼロに終わっている。7月にOPS1.002まで急回復すると、8月はさらに本塁打8本・OPS1.045まで爆発。9月も5本塁打、OPS.875と高い水準を維持しており、5月の"どん底"からの反転はシーズン最後まで続いた。

原因①「選球眼」ではなく「打球傾向」が変わった

まず注目すべきは、この変化が選球眼の改善によるものではないという点だ。空振り率・ボール球スイング率は9月15日時点、三振率・四球率は最終成績で比較する。

指標 〜6月30日 7月1日〜
空振り率(Whiff%) 26.7% 27.7%
ボール球スイング率(Chase%) 19.4% 19.9%
三振率(K%) 24.4% 26.9%
四球率(BB%) 14.1% 13.6%

空振り率もボール球スイング率もほとんど変化がなく、むしろ三振率は上昇、四球率はやや低下している。つまり「ボールをしっかり見極めて当てる能力」が向上したわけではない。それどころか、やや積極的に振りにいくスタイルに変わったとさえ言える。

では何が変わったのか。答えは打球の質そのものにあった(ゴロ率・フライ率は9月15日時点、本塁打率は最終成績)。

指標 〜6月30日 7月1日〜
ゴロ率(GB%) 49.5% 34.3%
フライ率(AIR%) 50.5% 65.7%
本塁打率(HR%、打席あたり) 1.9% 7.0%

ゴロ率が49.5%から34.3%へと大きく低下し、逆にフライ率(空中に上がる打球の割合)が50.5%から65.7%へと上昇。打球を上げる意識が明確に強まったことが数字に表れている。空振りが増えるリスクを許容してでも、ボールを持ち上げて長打・本塁打につなげるアプローチへと切り替えた――これが本塁打急増の正体だ。

原因②特定の球種だけでなく全球種で長打力が向上

この変化が一時的な"ヤマ勘"ではなく、根本的なアプローチの変化であることは、球種別のデータ(9月15日時点)からも裏付けられる。

球種 〜6月30日 被打率/被長打率 7月1日〜 被打率/被長打率
フォーシーム(ストレート) .245 / .396 .276 / .645
フォーク .130 / .130 .333 / .704
カットボール .067 / .067 .400 / .700

最も多く見る球種であるストレートへの長打率が.396から.645へ、大の苦手だったフォークは.130から.333(長打率に至っては.704)へ、カットボールも.067から.700へと、球種を問わずあらゆる球種に対して長打力が向上している。これは特定の相手や球種との相性が良かったという話ではなく、筒香自身のスイングやアプローチそのものが変わったことを強く示唆している。

原因③最大の弱点だった左投手を克服

そして今回のデータで最も驚くべき発見が、対左投手成績の劇的な変化だ(9月15日時点)。

〜6月30日 7月1日〜
対右投手 OPS .754 .885
対左投手 OPS .490 1.225

6月30日までの筒香は、対右投手OPS.754に対し対左投手はOPS.490と、左投手を大の苦手にしていた(wRC+59はリーグ平均を大きく下回る水準)。ところが7月以降は、対左投手OPS1.225(打率.404、52打数で5本塁打)という、対右投手(OPS.885)すら上回る驚異的な数字に変貌している。左投手への苦手意識を克服したどころか、むしろ最大の得意分野に変えてしまった格好だ。シーズン最終成績でも、対左投手は113打数30安打の打率.265、5本塁打と、対右投手(226打数58安打、打率.257、15本塁打)を打率で上回って終えている。

有利なカウントでの圧倒的な数字

9月15日時点のカウント別成績を見ると、筒香がどのようなアプローチで結果を残しているかがより鮮明になる。初球(0-0)は打率.563、2ストライクを取られる前の1-1では打率.533と、早いカウントで仕留める能力が非常に高い。一方で2ストライク後は.088〜.182まで数字が落ちる。追い込まれるまでに勝負を決める、狙い球を絞って強く振り抜くスタイルが、"打球を上げる"アプローチの変化と噛み合って大きな効果を生んでいると考えられる。

実は昨季も同じパターンだった

興味深いのは、この"シーズン中盤の覚醒"が今季に限った話ではないという点だ。昨季も打撃不振で2度の登録抹消を経験しながら、8月の一軍復帰後は33試合で14本塁打という驚異的なペースで結果を残し、クライマックスシリーズ初戦でも2本塁打を含む4安打3打点の活躍を見せている。今季の「5月どん底→7月以降爆発」という軌跡は、ベテランならではの"シーズンを通じて調整しながら状態を上げていく"パターンが2年連続で再現されたとも言えそうだ。

シーズン最後まで好調をキープ

9月は22試合で打率.276、5本塁打、OPS.875と高水準を維持し、9/12広島戦・9/15巨人戦でもそれぞれ本塁打を放った。10月の2試合でも7打数2安打3四球と出塁を続け、最後まで好調をキープしてシーズンを終えた。最終成績は99試合で打率.260、20本塁打、49打点、OPS.848。2年連続の20本塁打で、通算本塁打は252本となった。

まとめ

筒香嘉智の7月以降の変貌は、選球眼や相性といった表面的な要因ではなく、「打球を上げる」という明確なアプローチの変化に支えられていることがデータから浮かび上がった。空振り率や四球率がほぼ変わっていないにもかかわらず、ゴロ率が15ポイント以上低下し、あらゆる球種・左右の投手に対して長打力が向上している事実は、一時的なホットストリークではなく、根本的なスイング調整が実を結んだ結果と見るのが妥当だろう。

34歳というベテランの域に差し掛かりながら、シーズン中に自らのアプローチを修正し、しかも苦手だった左投手までも得意分野に変えてしまう対応力は、単純な「衰えない」という言葉では片付けられない。むしろ毎年状態を落としながらも、そこから修正して這い上がってくる引き出しの多さこそが、筒香というベテラン打者の真骨頂なのかもしれない。この変化が来季以降も持続するのか、引き続き注目していきたい。

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