中日ドラゴンズは9月29日、福敬登投手、三浦瑞樹投手、尾田剛樹外野手の支配下3人と、育成の土生翔太投手、川上理偉内野手、津田啓史内野手の合計6人に、来季の契約を結ばないことを通告した。かつて最優秀中継ぎ賞を獲得した実力者や、2軍で高い評価を得ていた選手も含まれる内容で、指揮官交代と同時に大きな世代交代が進むオフになりそうだ。ここでは6人それぞれの2026年シーズンの成績を、1軍・2軍の両方から詳しく振り返っていく。
支配下3人
福敬登(投手)―2軍WHIP0.94の"最優秀中継ぎ賞"経験者
2015年ドラフト4位で入団した左腕。2020年には最優秀中継ぎ賞を獲得するなど、リーグを代表するリリーバーとして活躍した実績を持つ。2022年には難病「黄色靱帯骨化症」を発症したが、リハビリを経てマウンドに復帰。2023年は29試合で防御率2.55、昨季2025年は17試合で防御率0.54と、復帰後も安定した成績を残していた。
しかし今季は1軍登板がわずか3試合・2.1回にとどまり、防御率3.86・奪三振2。一方の2軍では23試合に登板し0勝1敗・5セーブ、21.1回を投げて被安打16・奪三振26・与四球4、防御率1.69。WHIPは0.94、K/9は10.97、BB/9は1.69という、今回の6人の中でも際立って高い支配力を示していた。
23試合に登板しながら自責点はわずか4という数字は、シーズンを通じて安定してマウンドに送り出せるリリーバーとしての価値を証明するものだ。難病を克服してなお、2軍でこれだけの数字を残せていたにもかかわらず、1軍への出場機会自体がほとんど与えられなかったことが、今回の構想外という結果につながっている。中日の1軍ブルペン事情、あるいは年齢的な要素も含めた編成上の判断があったとみられ、単純な実力不足では説明のつかない戦力外だったと言えるだろう。
三浦瑞樹(投手)―7月下旬に今季初昇格も、わずか半月で抹消
27歳。ソフトバンクから育成契約でプロ入りし、支配下復帰を果たした苦労人。昨季2025年にプロ初勝利を挙げている。
今季はキャンプからアピールを続けたが、オープン戦では結果を残せず、7月下旬にようやく今季初昇格。3試合連続で無失点投球を披露したものの、8月16日の巨人戦で火消しの場面を任されて0.2回1失点、翌17日に登録抹消となった。最終的に1軍4試合・5.2回で0勝0敗、防御率1.59・奪三振6という内容だった。
2軍では14試合(先発起用も含む)で5勝5敗、59.2回を投げて被安打60・奪三振36・与四球20、防御率4.37。WHIPは1.34、K/9は5.43、BB/9は3.02。59.2回という投球回数の多さからも、先発の一角としてローテーションを担う役割も試されていたことがうかがえるが、被安打60はイニング数を上回る数字で、長いイニングを投げる中で安打を積み重ねられてしまう傾向が明確に表れていた。1軍でわずかとはいえ結果を残せたことを踏まえれば、リリーフとしての短いイニングへの適性の方が高かった可能性もあるだろう。
尾田剛樹(外野手)―2軍首位打者から一転、1軍は打率.125
プロ3年目。前年の2025年はファームで打率.308を記録し、2軍の首位打者に輝いた快足外野手だ。今季はその実績を評価されて1軍出場機会を増やし、35試合に出場。5月29日のオリックス戦でプロ初安打を記録したが、シーズン通算では8打数1安打・打率.125にとどまり、盗塁4を記録したのみだった。
1軍では打者としてよりも、代走や守備固めとしての起用が出場機会の中心だった。しかし終盤の重要な場面で牽制死や盗塁失敗といった走塁面のミス、無理に飛び込んで後方にボールを逸らす守備面のミスが度々見られ、ファンの間では"やらかし"の代表格としてある種の人気を集める存在にもなっていた。快足と強肩という素材の魅力がありながら、勝負を分ける場面でのプレー選択の精度が最後まで課題として残ったシーズンだったと言える。
2軍では48試合・102打席に立ち、打率.200・出塁率.290・長打率.271(OPS.561)、打点12・盗塁3。前年の首位打者(.308)という実績と比べると、実に100厘以上の下落であり、2軍成績自体も大きく後退している。1軍での結果不振と並行して、原点であるファームでの数字も落ち込んでしまったシーズンだったと言える。1軍で結果を求められるプレッシャーの中で、本来の持ち味だったコンタクト能力が影響を受けてしまった可能性も考えられる。
育成3人
土生翔太(投手)―球速低下という明確な課題
2023年ドラフト5位で育成入団した投手。今季は1軍登板がなく、2軍では17試合に登板し2勝1敗、18回を投げて被安打17・奪三振12・与四球5、防御率2.00。WHIP1.22、K/9は6.0、BB/9は2.5とまずまずの数字だったが、本人は戦力外通告を受けて「球速低下」を課題として挙げ、「戻そうとやってきたんですけど…」と悔しさを口にしている。
数字上は悪くない内容だっただけに、球速という"見えやすい"部分の後退が、評価に大きく影響したケースと言えるだろう。防御率やWHIPといった結果指標だけでは測れない、将来性・伸びしろの部分での評価が下がってしまったことが、契約満了という結論につながったとみられる。それでも本人は現役続行への意欲を示しており、球速の回復に向けたトレーニングの成果が、次のステージでどう表れるかが注目される。
川上理偉(内野手)―ファーム日本一に貢献した過去も、今季は打率.173
25歳、育成でプロ3年目。昨季2025年は5月時点までファームで打率2割6分台を維持し、チームのファーム日本一にも貢献した。本人も戦力外通告を受けて「いい3年間だった」と、ファーム日本一という経験を印象深く振り返っている。
しかし今季は2軍73試合・222打席に出場したものの、打率.173・出塁率.301・長打率.249(OPS.550)、本塁打2・打点13・盗塁8。出塁率.301と打率.173との間には130厘近い差があり、四球を選ぶ選球眼自体は保たれていたことがうかがえるが、打率の低さがそのままOPS全体を押し下げる結果になった。73試合・222打席という、今回の3人の野手の中でも最も多い出場機会を与えられていただけに、結果に結びつけられなかったことが余計に悔やまれるシーズンだったと言える。
津田啓史(内野手)―ドラ2入団も支配下復帰ならず
23歳。2023年ドラフト2位で入団した内野手で、当初は支配下選手としてプロ入りしたが、その後育成契約となっていた。プロ3年目の今季も支配下復帰は叶わず、1軍出場機会もなかった。2軍では77試合・236打席に出場し、打率.251・出塁率.340・長打率.314(OPS.654)、本塁打1・打点14・盗塁8。今回の6人の中では比較的まとまった打撃成績を残していたが、ドラフト2位という指名順位を踏まえると、物足りなさが残る結果だったと言える。「まだやる気はある」と現役続行への意欲を語っている。
77試合・236打席という出場機会は野手3人の中で最多で、シーズンを通じてレギュラー格に近い起用を受けていたことがうかがえる。打率.251自体は決して悪くない数字だが、本塁打1本・OPS.654という長打力の乏しさが、支配下復帰の決定打を欠く要因になったとみられる。ドラフト2位で入団しながら3年目も育成の枠を出られなかったことは、指名順位の高さと結果とのギャップという意味で、今回の6人の中でも特に重く受け止められるケースだろう。
2軍成績から見えてくる傾向
投手陣を見ると、福敬登(WHIP0.94・K/9 10.97)は今回の6人の中でも突出した支配力を示していた一方、三浦瑞樹(WHIP1.34)・土生翔太(WHIP1.22)は及第点ながら際立った数字とは言えない内容だった。福敬登のケースは、DeNAの佐々木千隼やヤクルトの田口麗斗と同様、"2軍では十分すぎる結果を残しながら1軍出場機会そのものが少なかった"典型例と言える。
野手陣では、津田啓史(OPS.654)が今回の3人の中では最も安定した数字を残していたのに対し、尾田剛樹(OPS.561)・川上理偉(OPS.550)は前年からの後退、あるいは伸び悩みが目立つ内容だった。特に尾田剛樹は前年の2軍首位打者という実績からの大幅な下落であり、1軍の壁に跳ね返された影響が2軍成績にも及んでいた可能性がある。
投手陣のBB/9(9イニングあたりの与四球数)を並べてみると、福敬登1.69・土生翔太2.5・三浦瑞樹3.02の順となり、福敬登の制球力が今回の3投手の中でも突出していたことが数字上も裏付けられる。一方でK/9(9イニングあたりの奪三振数)は福敬登10.97・三浦瑞樹5.43・土生翔太6.0の順で、奪三振能力という観点でも福敬登が最も高い水準を保っていた。それでも構想外という結果になった事実は、指標上の優秀さだけでは1軍の座を保証しないという、リリーフ投手を取り巻く厳しい現実を映し出している。
出場試合数で見ると、津田啓史(77試合)・川上理偉(73試合)の2人は今回の野手3人の中でも多くの実戦機会を与えられていたが、それでも支配下復帰・1軍定着には届かなかった。出場機会と結果が必ずしも比例しない点は、投手陣の福敬登のケースとも共通する構図と言えるだろう。
全体を振り返って
今回の6人を見渡すと、支配下3人はいずれも1軍での出場機会自体がごく限られていた点が共通している。福敬登はわずか3試合、三浦瑞樹は4試合、尾田剛樹も35試合とはいえ実質的な出場は限定的で、3人とも「2軍では一定以上の内容を残しながら、1軍の壁を越えられなかった」という構図に当てはまる。特に福敬登の2軍WHIP0.94という数字は、今回の中日6人の中でも最も際立った支配力であり、実力と起用機会が必ずしも一致しないプロ野球の難しさを象徴するケースと言えるだろう。
一方の育成3人に目を向けると、川上理偉のファーム日本一貢献、津田啓史のドラフト2位という指名順位の高さなど、いずれも過去に一定の期待や実績を背負っていた選手たちだった。それだけに、今季の数字面での伸び悩みが契約満了という結果に直結してしまったことは、育成選手というポジションの厳しさを改めて浮かび上がらせている。
まとめ
今回の6人には、最優秀中継ぎ賞や2軍首位打者、ファーム日本一への貢献といった、それぞれ異なる形の実績を持つ選手たちが含まれていた。それでも1軍出場機会の少なさ、あるいは1軍での結果不振が響き、構想外という結果になったケースが多い。
同時期にはDeNAが10人、ヤクルトが6人の戦力外を発表しており、中日の今回の6人と合わせると、今オフは複数球団で大規模な世代交代が同時進行していることになる。中日のケースは、DeNAで目立った"2軍で十分すぎる数字を残しながら1軍出場機会そのものが少なかった"パターン(福敬登など)と、ヤクルトで目立った"2軍成績自体にも改善の余地が残っていた"パターン(川上理偉・尾田剛樹など)の両方が混在している点が特徴的だ。折しも指揮官交代が発表されたばかりの中日にとって、今回の大幅な戦力再編は、新体制のもとでのチーム作りが本格的に動き出す前触れとも言えるだろう。来季に向けた新戦力の発表と合わせて、今後の動向を注視していきたい。