東京ヤクルトスワローズは9月29日、沼田翔平投手、田口麗斗投手、青柳晃洋投手、長谷川宙輝投手、山野辺翔内野手の支配下5人と、育成の根岸辰昇内野手の合計6人と、来季の契約を結ばないことを通達したと発表した。かつての守護神やタイトルホルダーも名を連ねる厳しい内容で、来季に向けた大きな世代交代の始まりを予感させる発表となった。ここでは6人それぞれの2026年シーズンの成績を、1軍・2軍の両方から詳しく振り返っていく。
支配下5人
沼田翔平(投手)―2軍チームトップ33登板でも1軍出場なし
プロ8年目。旭川大高から育成で巨人に入団し、2022年に戦力外通告を受けてヤクルトへ加入した経歴を持つ。2023年に参加したウィンターリーグでは3試合2勝0敗・防御率0.47と好投し、一時はブレイクも期待されていた。
しかし今季は1軍登板が一度もなく、2軍では球団トップとなる33試合に登板し、2勝2敗2セーブ、35回を投げて被安打45・奪三振26・与四球14、防御率3.60。WHIP1.69、K/9は6.69、BB/9は3.60という内容で、登板数の多さの割に被安打の多さが目立つ数字だった。35回で45安打を許すというペースは、単純計算で1回あたり1本以上の安打を許している状態に近く、リリーフとして短いイニングを無難に抑えるタイプの投手としては、決して満足のいく内容ではなかったと言える。チーム最多の登板機会を与えられながら1軍昇格に結びつけられなかったことが、今回の結果につながったとみられる。
田口麗斗(投手)―かつての守護神、防御率上昇が続いた5年間
2021年3月、廣岡大志との交換トレードで巨人からヤクルト加入。移籍1年目から2年連続のリーグ優勝に貢献し、2023年には33セーブを挙げてリーグを代表する守護神に上り詰めた。
ところがその後は防御率が右肩上がりに推移していく。2022年1.25→2023年1.86→2024年2.94→2025年2.76、そして今季2026年は1軍14試合・14.1回で1勝0敗・2ホールド、防御率3.14(被安打19・奪三振11・与四球6)。かつての支配力からは程遠い内容だった。
2軍でも20試合・19.1回で1勝2敗・2セーブ、防御率2.79。WHIP1.50、K/9は11.17と奪三振能力自体は高い水準を保っていたが、被安打25はイニング数に対してかなり多く、四球の少なさ(与四球わずか4)とのバランスの悪さが、かつての絶対的な安定感が失われつつあることを示していた。四球をほとんど出さない一方で長打を含む安打を浴びやすいというのは、ボール自体の力や変化球の質に、以前ほどの余裕がなくなってきている可能性を示唆するデータでもある。33セーブを挙げた2023年から数えてわずか3年での構想外という結果は、リリーフ投手としての賞味期限の短さを物語る、シビアな事例と言えるだろう。
青柳晃洋(投手)―元阪神の投手三冠右腕、今季1軍登板ゼロ
32歳。阪神時代の2022年に最多勝・最高勝率の2年連続タイトルに加え最優秀防御率も獲得する投手三冠、ベストナインにも輝いた実力者だ。2024年オフにポスティングシステムでフィリーズと契約し、2025年はマイナー(傘下2A)でプレー。同年7月末に自由契約となり、その直後にヤクルトへ加入した。
移籍1年目の2025年は3試合の登板で0勝2敗、防御率8.10。今季2026年は1軍登板が一度もなく、2軍暮らしが続いた。2軍では20試合(9先発)に登板し6勝6敗、73.1回を投げて被安打72・奪三振66・与四球33・与死球8、防御率4.42。WHIP1.43、K/9は8.10、BB/9は4.05という内容だった。
73.1回という投球回数自体は、シーズンを通じて先発陣の一角を任され続けていたことを示しており、故障などで大きく離脱していたわけではないことが分かる。ただし、かつての阪神時代のエースとしての面影は薄く、被安打72・与四球33という数字が示す通り、球威・制球ともに全盛期からは大きく後退していた。フィリーズ2A時代からの技術的な再構築が、2年目の今季もまだ実を結んでいなかったと言えるだろう。
長谷川宙輝(投手)―今季唯一の1軍登板が大炎上
元ソフトバンク。2019年オフに自由契約となり、2020年からヤクルトでプレー。加入1年目の2020年には44試合に登板した実績を持つ。
しかし今季の1軍登板はわずか1試合のみで、1回を投げて2安打・1被弾、与四死球3という大炎上に終わった。わずか1イニングの中で長打を含む安打と本塁打、複数の四死球を与えるという内容は、コントロールが定まらないまま強打者に踏み込まれた苦しい登板だったことをうかがわせる。
2軍では28試合に登板し0勝1敗、38.2回で被安打38・奪三振22・与四球25、防御率3.49。WHIP1.63、K/9は5.12、BB/9は5.82と、与四球の多さが際立つ内容で、制球面の課題が2軍でも1軍でも共通して表れていた。28試合という登板数自体はチーム内でも多い部類に入るが、四球の多さがそのまま失点リスクに直結しやすいタイプの投手であり、1軍の緊張感の高い場面ではその弱点がより顕著に出てしまったと考えられる。
山野辺翔(内野手)―2軍打率.308も1軍では.231
32歳。昨年5月に西武から金銭トレードでヤクルトへ加入したユーティリティ内野手。今季は1軍21試合に出場し、一塁も守るなど複数ポジションでの起用を見せたが、打率.231・3打点にとどまった。
一方で2軍では49試合・139打席に立ち、打率.308・出塁率.384・長打率.383(OPS.767)、本塁打1・打点13・盗塁8という、今回の6人の中でも際立って高い打撃成績を残していた。長打力こそ控えめだが、3割超の打率と.384という高い出塁率の組み合わせは、コンタクト能力・選球眼ともに衰えていないことを示している。32歳という年齢を踏まえると、球団としては年齢構成やポジション事情を含めた編成上の判断があったとみられ、2軍でこれだけの数字を残しながら1軍では結果に結びつかなかった点は、成績面だけでは説明のつかない難しいケースと言えるだろう。
育成1人
根岸辰昇(内野手)―1軍出場なしの2年目、2軍でもやや後退
2024年10月の育成ドラフト1位でヤクルト入団した左投左打の育成スラッガー。ルーキーイヤーの2025年は2軍47試合で打率.214だった。2026年は2軍42試合・94打席に出場し、打率.230・出塁率.287・長打率.287(OPS.574)、本塁打1・打点8。
打率自体はわずかに前年を上回ったものの、出塁率・長打率ともに打率とほぼ同水準にとどまっており、四球を選ぶ選球眼や長打を生み出す力といった、打率以外の部分での伸びが見られなかった点が課題として浮かび上がる。「スラッガー」としての期待を背負って入団した経緯を踏まえると、本塁打1本という数字は物足りなさが残る内容だ。1軍出場機会は今季もなく、育成2年目としてもう一段の伸びが求められる中での契約満了となった。
2軍成績から見えてくる傾向
今回の6人の2軍成績を見渡すと、共通するのは「2軍でも明確な突出した数字を残せていない投手が多い」という点だ。沼田翔平(WHIP1.69)・長谷川宙輝(BB/9 5.82)・青柳晃洋(WHIP1.43)は、いずれも2軍レベルでも被安打・与四球の多さが目立ち、DeNAの戦力外投手陣で見られたような"2軍では十分だったが1軍で機会を得られなかった"というパターンとは異なり、"2軍でも制球・被打を含めた課題が残っていた"投手が多いのがヤクルトのケースの特徴と言える。田口麗斗のK/9 11.17のように奪三振能力自体は高い投手もいたが、それでも被安打の多さが数字を押し上げていた。
野手では山野辺翔(OPS.767)が明確に2軍で結果を残していた一方、根岸辰昇(OPS.574)はまだ発展途上という数字だった。山野辺のケースは、2軍での実績と1軍での起用機会・結果との間にギャップがあった典型例として捉えられる。
投手陣のBB/9を並べてみると、田口麗斗1.86・沼田翔平3.60・青柳晃洋4.05・長谷川宙輝5.82という順になり、長谷川の制球難が今回の4投手の中でも際立って深刻だったことが数字上も裏付けられる。一方でK/9は田口麗斗11.17・青柳晃洋8.10・沼田翔平6.69・長谷川宙輝5.12の順で、奪三振能力という観点では田口が今回の投手陣の中で最も高い水準を保っていたことが分かる。それでも構想外となったという事実は、奪三振能力の高さだけでは1軍での生存を保証しないという、プロ野球のリリーフ投手を取り巻く厳しい現実を映し出している。
全体を振り返って
今回の6人には、かつてリーグ屈指の実績を持っていた選手が2人含まれている点が印象的だ。田口麗斗は2023年に33セーブを挙げた守護神、青柳晃洋は2022年に投手三冠を獲得した阪神時代のエースだった。それぞれ移籍・環境の変化を経て数字を落とし、最終的に構想外となったことは、一度頂点を極めた投手であっても年々の積み重ねがなければポジションを維持できないというプロ野球の厳しさを改めて示している。
また、沼田翔平・田口麗斗・青柳晃洋・長谷川宙輝の4投手すべてが、他球団を経てヤクルトに加入した経歴を持つという点も共通している。生え抜きではなく、育成契約・トレード・自由契約後の獲得といった形で加入した投手たちが、それぞれ再起を目指しながらも最終的に構想外となったことは、"移籍先での再生"がいかに難しいかを物語っている一方で、ヤクルトというチームが常に外部の戦力を積極的に取り込みながら世代交代を進めてきたことの裏返しでもあるだろう。
まとめ
今回発表された6人は、かつての守護神やタイトルホルダーを含む、決して実績に乏しい選手たちではない。それでも2軍成績を細かく見ていくと、被安打や与四球の多さといった課題が共通して見られ、1軍定着に必要な最後のひと押しに欠けていたことがうかがえる。
同時期に発表されたDeNAの戦力外10人と比較すると、ヤクルトの今回のケースは"2軍でも明確な課題を抱えていた投手が多い"という点で、傾向がやや異なっていた。DeNAでは2軍で高い支配力を示しながら1軍出場機会そのものが少なかった選手が目立ったが、ヤクルトの場合は2軍成績自体にも改善の余地が残るケースが多く、より構造的な世代交代の色合いが強い戦力外通告だったと言えるだろう。ヤクルトが来季に向けてどのような編成でこの穴を埋めていくのか、今後の新戦力の動向にも注目していきたい。