マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクターのイチロー氏(53)が11月7日と8日の2日間、大分市の大分舞鶴高を訪れ、野球部を指導した。大分舞鶴は県内屈指の県立進学校で、2022年のセンバツに21世紀枠で甲子園に初出場している。夏の大分大会では2021年以降に4度決勝へ進んだが、いずれも明豊に敗れ、夏の甲子園にはまだ出場していない。イチロー氏はその明豊を例に挙げ、「みんなは甲子園出場を狙っている。でも、相手は全国制覇を狙っている」と、強豪と戦うための心構えを説いた。この記事では、2日間の指導の内容をまとめたうえで、大分舞鶴の直近5年の県大会と九州大会の成績、明豊との対戦成績を振り返る。
イチロー氏の高校指導は7年連続14校目
イチロー氏は2020年2月に学生野球資格回復制度の認定を受け、高校生を指導できるようになった。2020年12月の智弁和歌山から始まり、大分舞鶴は7年連続で14校目になる。これまでに指導した高校のうち、智弁和歌山、国学院久我山、高松商、九州国際大付の4校が、その後に甲子園に出場している。
訪問のきっかけは、3年生の部員と保護者から届いた手紙だった。外野手の宮城凌成の父は、近大の学生だった2006年のWBC前に、神戸でイチロー氏の打撃投手を数日間務めた。それから約20年後、宮城と1年生の弟がそろって大分舞鶴の野球部に在籍していた。イチロー氏は部員の前で「野球を続けていると、こういう出会いがある。縁が面白い」と話している。
2日間の指導内容
初日:守備を見て「俺、いらないんじゃないか」
初日の7日は、外野ノックを見守りながら、自ら捕球を実演する場面もあった。夏の大分大会で毎年上位に進みながら甲子園に届かずにいるチームの守備に、「本当にあと一歩なんだと、守備を見てても分かります。俺、いらないじゃないかって」と話している。打撃練習も実演し、隣接する体育館の屋根に届く推定約120メートルの打球を放った。
2日目:走塁の打球判断で練習を止める
8日は走塁練習から始まった。一塁ベースの脇でリードの位置について「けん制があって、ぎりぎりセーフになる位置が、正しい第1リードの位置」と助言した。二塁走者の打球判断に気になる点があると、練習を止めて約40分にわたって部員に語りかけた。「18でプロ野球に入って、一番難しいと感じたのは打球判断。打球判断が試合を決めることも多い」と話し、「今日はちょっと距離のある一歩だなとも思った」と、初日とは違う印象を口にしている。
明豊を例に「相手は全国制覇を狙っている」
イチロー氏が繰り返し名前を挙げたのが、夏の大分大会で大分舞鶴が勝てずにいる明豊だった。「全国のトーナメント表、今年なら健大高崎とか、智弁、横浜、大阪桐蔭とか。その次にくるのが、明豊とか明徳。優勝候補が、1回戦で当たるとマジかぁってなるチームが明豊」と評価し、「みんなは甲子園出場を狙っている。でも、相手は全国制覇を狙っている。それを知っておかないと」と語った。
そのうえで、「大分舞鶴を目標にしているチームには負けない。そういうチームには大胆に動ける。でも、明豊相手にはそれができない」と指摘した。練習時間が限られる進学校だからこそ、「クオリティ上げるしかないよ」と練習の質を求め、打てる投手との打撃練習ではあえて2ストライクから始めるなど、難しい状況を自分たちでつくるよう提案している。
「舞鶴あるある」と「強い人間」
問いかけに部員が黙り込む場面もあり、イチロー氏は「みんなマジメで素直。勝ってるときはいい。劣勢のとき、どんよりした空気が伝染しちゃう」と話し、「舞鶴あるある」だと指摘した。練習後の質疑応答では、「強い人間とはどういう人間か」という質問に、「耐える能力、あらゆるものに対する耐性が高い人」と「胆力」の2点を挙げている。
河室聖司監督(62)は「全部、グサグサ突き刺さりました」と振り返った。8日の午前中にあった1年生大会では、前日にティー打撃がうまくいかなかった選手が、レベルスイングでいい打撃を見せたという。
大分舞鶴の直近5年の成績
ここからは、2022年から2026年までの5年間の大分舞鶴の成績を振り返る。春と秋の県大会、夏の大分大会、春と秋の九州大会の最終成績は次のとおりだ。
| 年 | 春・県大会 | 春・九州大会 | 夏・大分大会 | 秋・県大会 | 秋・九州大会 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2022年 | -(センバツ出場) | 8強 | 準優勝 | 8強 | - |
| 2023年 | 優勝 | 準優勝 | 4強 | 準優勝 | 8強 |
| 2024年 | 4強(3位) | - | 準優勝 | 4強 | - |
| 2025年 | 8強 | - | 準優勝 | 8強 | - |
| 2026年 | 8強 | - | 4強 | 3回戦 | - |
5年間の公式戦の成績は、センバツを含めて50勝17敗だった。夏の大分大会は5年すべてで4強以上に進み、そのうち3度が準優勝だ。春は2023年に県大会で優勝し、春季九州大会でも準優勝した。秋は2023年に県大会準優勝で九州大会に進み、8強に入っている。一方、2025年秋は8強、2026年秋は3回戦で敗れ、ここ2年の秋は上位進出を逃している。
2021年秋の準優勝から2022年センバツへ
大分舞鶴が甲子園に初めて出場したのは2022年のセンバツだった。2021年秋の県大会で準優勝し、九州大会に出場したが、1回戦で大島に2-3で敗れた。それでも21世紀枠で選ばれ、センバツでは1回戦で浦和学院に0-4で敗れている。
夏の大分大会:決勝で明豊に4度敗れる
夏の大分大会の成績を、2021年から年ごとにまとめた。スコアは大分舞鶴の得点を先に書いている。
| 年 | 成績 | 勝敗 | 敗れた試合 |
|---|---|---|---|
| 2021年 | 準優勝 | 4勝1敗 | 決勝 明豊 0-6 |
| 2022年 | 準優勝 | 4勝1敗 | 決勝 明豊 3-12 |
| 2023年 | 4強 | 3勝1敗 | 準決勝 明豊 1-2 |
| 2024年 | 準優勝 | 4勝1敗 | 決勝 明豊 6-12 |
| 2025年 | 準優勝 | 4勝1敗 | 決勝 明豊 1-2 |
| 2026年 | 4強 | 3勝1敗 | 準決勝 津久見 4-6 |
大分舞鶴は2021年から6年続けて夏の大分大会で4強以上に進んだ。決勝に進んだのは2021年、2022年、2024年、2025年の4度で、相手はいずれも明豊だった。2021年は0-6、2022年は3-12、2024年は6-12で敗れ、2025年は1-2と、あと1点まで迫ったが届かなかった。2023年も準決勝で明豊に1-2で敗れている。
明豊の夏の連覇が途切れた2026年は、準決勝で津久見に4-6で敗れた。この年の大分大会は大分商が優勝している。
明豊との公式戦は1勝8敗
2021年から2026年までに、大分舞鶴は公式戦で明豊と9度対戦した。
| 年 | 大会 | 回戦 | 結果 | スコア |
|---|---|---|---|---|
| 2021年 | 夏・大分大会 | 決勝 | ● | 0-6 |
| 2021年 | 秋・県大会 | 決勝 | ● | 9-10 |
| 2022年 | 夏・大分大会 | 決勝 | ● | 3-12 |
| 2023年 | 春・県大会 | 準決勝 | ○ | 4-3 |
| 2023年 | 夏・大分大会 | 準決勝 | ● | 1-2 |
| 2023年 | 秋・県大会 | 決勝 | ● | 2-6 |
| 2024年 | 夏・大分大会 | 決勝 | ● | 6-12 |
| 2024年 | 秋・県大会 | 準決勝 | ● | 2-3 |
| 2025年 | 夏・大分大会 | 決勝 | ● | 1-2 |
勝ったのは2023年春の県大会準決勝の4-3の1試合だけで、大分舞鶴はこの大会で優勝した。それ以外の8試合はすべて敗れており、このうち6試合が決勝だった。1点差で敗れた試合も、2021年秋の決勝(9-10)、2023年夏の準決勝(1-2)、2024年秋の準決勝(2-3)、2025年夏の決勝(1-2)と4試合ある。あと一歩のところで明豊に阻まれてきたことが、イチロー氏の「相手は全国制覇を狙っている」という言葉の背景にある。
九州大会の全試合
| 年 | 大会 | 回戦 | 結果 | 対戦校 | スコア |
|---|---|---|---|---|---|
| 2021年 | 春 | 2回戦 | ● | 九州国際大付 | 0-2 |
| 2021年 | 秋 | 1回戦 | ● | 大島 | 2-3 |
| 2022年 | 春 | 1回戦 | ○ | 九州学院 | 3-0 |
| 2022年 | 春 | 準々決勝 | ● | 神村学園 | 4-11 |
| 2023年 | 春 | 1回戦 | ○ | 鹿児島城西 | 6-3 |
| 2023年 | 春 | 準々決勝 | ○ | 文徳 | 6-2 |
| 2023年 | 春 | 準決勝 | ○ | 西日本短大付 | 7-0 |
| 2023年 | 春 | 決勝 | ● | 有明 | 3-16 |
| 2023年 | 秋 | 1回戦 | ○ | 長崎日大 | 2-1 |
| 2023年 | 秋 | 準々決勝 | ● | 熊本国府 | 6-7 |
九州大会には2021年以降、春に3度、秋に2度出場した。最も勝ち進んだのは2023年春で、鹿児島城西、文徳、西日本短大付を破って決勝に進んだが、有明に3-16で敗れて準優勝だった。2023年秋は1回戦で長崎日大に2-1で勝ち、準々決勝で熊本国府に6-7で敗れている。
まとめ
- イチロー氏が11月7日と8日に大分舞鶴を指導した。高校生への指導は2020年の智弁和歌山から7年連続で14校目。
- 明豊を例に「みんなは甲子園出場を狙っている。でも、相手は全国制覇を狙っている」と語り、走塁の打球判断や練習の質の大切さを説いた。
- 大分舞鶴は2022年から2026年までの5年間、公式戦で50勝17敗。夏の大分大会は毎年4強以上に進み、春は2023年に県大会優勝、九州大会準優勝。
- 夏の大分大会の決勝には2021年以降4度進んだが、いずれも明豊に敗れた。明豊との公式戦は2021年以降1勝8敗で、1点差の敗戦が4試合ある。
- 甲子園の出場は2022年センバツ(21世紀枠)の1度だけで、夏の甲子園はまだない。
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出典
・イチロー氏「健大高崎、智弁、横浜、大阪桐蔭…優勝候補が、1回戦で当たるとマジかぁってなるチームが明豊」|スポーツ報知
・イチロー氏が7年連続14校目となる高校球児指導 過去には4校が指導後に甲子園出場|日刊スポーツ
・イチロー氏が大分舞鶴高で指導 ナインに説いた「舞鶴あるある」とは?|サンケイスポーツ
・イチロー氏が「こなきゃいけなかった」 気づいた訪問の意味|Full-Count
・イチローの“打撃投手”から20年…息子2人が直接指導「縁が面白い」|Full-Count
・イチローさん、大分で指導 公立校へ、強豪撃破の助言|共同通信
・イチロー氏から2日間の指導 大分舞鶴・河室聖司監督「全部、グサグサ突き刺さりました」|スポーツ報知
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・大分舞鶴 戦績|スポーツナビ
・第108回全国高等学校野球選手権 大分大会|高校野球ドットコム