巨人の橋上秀樹監督代行(60)が、今季限りで退任する見通しとなった。サンケイスポーツが10月12日に報じたもので、10月11日のクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ第2戦でDeNAに敗れ、今季の戦いが終わったことを受けての判断とみられる。後任の監督は未定だが、候補としてOBの松井秀喜氏、元監督の高橋由伸氏、川相昌弘ディフェンスチーフコーチらの名前が挙がっているという。
この記事では、橋上監督代行の今季の戦いぶりを振り返ったうえで、後任候補とされる3人の経歴と実績を整理する。2016年から2018年まで巨人の指揮を執った高橋氏については、前回の監督時代の成績も詳しく見ていく。
橋上秀樹監督代行が退任へ
橋上監督代行は、阿部慎之助前監督が5月26日に辞任したことを受け、オフェンスチーフコーチから昇格して指揮を執ってきた。シーズン途中という難しいタイミングでのバトンタッチだったが、就任後は97試合で52勝42敗3分と勝ち越し、最後まで阪神と優勝争いを演じた。
| 監督 | 期間 | 試合 | 勝 | 敗 | 分 | 勝率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 阿部慎之助 | 開幕~5月24日 | 46 | 24 | 22 | 0 | .522 |
| 橋上秀樹(代行) | 5月26日~ | 97 | 52 | 42 | 3 | .553 |
| シーズン計 | 2位 | 143 | 76 | 64 | 3 | .543 |
チームは最終的に76勝64敗3分の2位でレギュラーシーズンを終えた。阿部前監督の下での成績が46試合で24勝22敗、勝率.522だったのに対し、橋上監督代行の下では勝率.553と、勝率を上げてシーズンを戦い抜いている。
しかし、CSファーストステージでは3位のDeNAに連敗し、今季の戦いを終えた。第1戦は井上温大が8回1失点と好投しながら1-2で敗れ、第2戦も打線が4回のダルベックのソロ本塁打による1点にとどまり、1-4で敗れた。巨人がCSでDeNAに敗れるのは3年連続となった。
試合後、橋上監督代行は「私自身のかじ取りというものがうまくいかなかった。それに尽きる」と責任を背負った。一方で、「緊急事態になったことで、ある意味団結した。私自身も非常に助けられた」と、シーズン途中からともに戦った選手たちに感謝の言葉を口にしている。
なお、阿部前監督は5月に逮捕され、釈放後に監督を辞任した。6月15日に不起訴処分となっており、今後はフロントを基本線として球団に復帰するプランが進んでいるという。
後任候補3人の現役時代の成績
後任候補として名前が挙がっている3人は、いずれも巨人で長く活躍したOBだ。まずは、3人の現役時代のNPBでの通算成績を比較してみる。
| 候補 | 現役時代の球団 | 試合 | 打率 | 安打 | 本塁打 | 打点 | 主な記録 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 松井秀喜 | 巨人(1993~2002) | 1268 | .304 | 1390 | 332 | 889 | 本塁打王・打点王3度、MVP3度 |
| 高橋由伸 | 巨人(1998~2015) | 1819 | .291 | 1753 | 321 | 986 | 新人で打率.300・19本塁打 |
| 川相昌弘 | 巨人・中日(~2006) | 1909 | .266 | 1199 | 43 | 322 | 通算533犠打(世界記録) |
松井氏と高橋氏は、いずれも巨人の中軸を担った長距離打者。川相氏は通算533犠打の世界記録を持つ名脇役と、3人のタイプは大きく異なる。それぞれの経歴と、監督候補としての特徴を見ていく。
候補①高橋由伸氏―2016~2018年に監督経験
現役時代の実績
高橋由伸氏は1975年4月3日生まれの51歳。桐蔭学園高、慶応大を経て、1998年に巨人に入団した。ルーキーイヤーから126試合に出場して打率.300、19本塁打をマークすると、2年目の1999年には打率.315、34本塁打、98打点と主力打者に成長した。
その後も巨人の中軸を担い続け、2007年には打率.308、35本塁打と自己最多の本塁打を記録した。故障に苦しんだシーズンもあったが、18年間の現役生活で通算1819試合に出場し、打率.291、1753安打、321本塁打、986打点を残している。現役最終年の2015年は選手兼任の打撃コーチも務め、同年限りで現役を引退した。
前回の監督時代の成績
高橋氏は現役を引退した直後の2016年から、40歳の若さで巨人の監督に就任した。3年間の監督成績は次の通りだ。
| 年度 | 順位 | 試合 | 勝 | 敗 | 分 | 勝率 | ゲーム差 | チーム打率 | チーム本塁打 | チーム防御率 | CS |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 2016 | 2位 | 143 | 71 | 69 | 3 | .507 | 17.5 | .251 | 128 | 3.45 | 1stで敗退(DeNA) |
| 2017 | 4位 | 143 | 72 | 68 | 3 | .514 | 16.5 | .249 | 113 | 3.31 | 出場なし |
| 2018 | 3位 | 143 | 67 | 71 | 5 | .486 | 13.5 | .257 | 152 | 3.79 | ファイナルで敗退(広島) |
| 通算 | - | 429 | 210 | 208 | 11 | .502 | - | - | - | - | - |
就任1年目の2016年は71勝69敗3分で2位となり、CSに進出した。しかし、ファーストステージで3位のDeNAに1勝2敗で敗れている。2年目の2017年は72勝68敗3分と勝ち越しながら4位に終わり、CS出場を逃した。巨人がBクラスに沈んだのは、2006年以来11年ぶりのことだった。
3年目の2018年は67勝71敗5分と負け越したものの、3位でCSに進出。ファーストステージでヤクルトに2連勝したが、ファイナルステージでは優勝した広島に敗れ、日本シリーズ進出はならなかった。高橋氏はこの年限りで監督を退任し、翌2019年からは原辰徳氏が3度目の監督に復帰している。
3年間の通算成績は429試合で210勝208敗11分、勝率.502。リーグ優勝には届かず、優勝チームとのゲーム差は3年とも10ゲーム以上離れた。2018年はチーム本塁打が3年間で最多の152本を記録した一方で、チーム防御率は3.79と3年間で最も悪く、投手陣が課題となっている。
再登板なら経験が生きるか
前回の就任時は、現役引退の直後で指導者経験がないまま監督に就任した。今回は監督として3年間戦った経験があり、監督退任後は解説者として外から野球を見てきた期間もある。前回とは違った立場でチームを率いることができる点は、再登板の大きな強みになる。
一部では、高橋氏が新監督の最有力候補とも報じられている。前回の監督時代には優勝を果たせなかっただけに、再び指揮を執ることになれば、リベンジの舞台にもなる。
候補②松井秀喜氏―日米通算507本塁打のスーパースター
松井秀喜氏は1974年生まれの52歳。星稜高から1992年のドラフト1位で巨人に入団し、10年間で通算332本塁打、889打点、打率.304を記録した。1998年、2000年、2002年には本塁打王と打点王の2冠を獲得。特に2002年は50本塁打を放ち、打率.334、107打点と圧倒的な成績を残した。
2003年からはメジャーリーグに挑戦し、ヤンキースなどで10年間プレー。2009年にはワールドシリーズでMVPに輝いた。日米通算507本塁打を放った実績は、日本球界の歴史の中でも別格だ。2013年には、長嶋茂雄氏とともに国民栄誉賞を受賞している。
松井氏は巨人ファンの間で「いつか監督に」という期待が根強く、これまでも監督候補として何度も名前が挙がってきた。ただし、引退後はヤンキースのGM特別アドバイザーなどを務めており、日本のプロ野球でコーチや監督を務めた経験はない。生活の拠点も米国にあり、実際に就任を受けるかどうかは本人の意向次第となる。
実現すれば、話題性やチームへの求心力は抜群だ。指導者経験がないまま監督に就任した場合、どのようなコーチ陣を組閣するのかが大きなポイントになるだろう。
候補③川相昌弘コーチ―通算533犠打の名手
川相昌弘氏は、巨人と中日で一軍23シーズンにわたってプレーした内野手だ。通算533犠打は世界記録として知られ、堅実な守備とバントでチームを支えた「いぶし銀」の選手だった。1993年に打率.290、1994年には打率.302を記録するなど、打撃でも存在感を見せた。
引退後は中日、巨人で指導者を務め、現在は巨人のディフェンスチーフコーチとしてチームを支えている。現場で長く若手を指導してきた経験があり、今のチームの選手たちを最もよく知る候補の1人だ。
今季の巨人は、得点圏で決定打を欠く試合が目立った。CSでも2試合で計2得点と打線が振るわなかった。守備や走塁、小技を重視する川相氏が指揮を執れば、1点を確実に取りにいく野球へと方向性が変わる可能性もある。
3候補の比較と今後の焦点
3人の候補を比較すると、監督経験があるのは高橋氏だけだ。前回は優勝に届かなかったものの、3年間で2度CSに進出しており、チームの内情もよく知っている。松井氏は話題性と実績では群を抜くが、指導者経験がない点と、本人の意向が最大の焦点になる。川相氏は現場の指導者としての経験が豊富で、今のチームを最もよく知る存在だ。
新監督が誰になるにせよ、来季の巨人に求められるのは3年ぶりのリーグ優勝だ。今季は井上温大、竹丸和幸といった若い左腕が台頭した一方で、得点力不足や先発陣の故障者続出といった課題も浮き彫りになった。今オフは、広島の森下暢仁、床田寛樹、オリックスのエスピノーザといったFA・移籍市場の先発投手の調査も報じられており、新体制の発足とあわせて、大型補強に動く可能性もある。
まとめ
巨人の橋上秀樹監督代行は、シーズン途中から指揮を執って52勝42敗3分と勝ち越し、チームを2位に導いたが、CSファーストステージでDeNAに敗れて退任する見通しとなった。後任候補には、2016~2018年に監督を務めた高橋由伸氏、日米通算507本塁打の松井秀喜氏、現役コーチの川相昌弘氏らの名前が挙がっている。
高橋氏は前回の監督時代に3年間で210勝208敗11分、リーグ優勝には届かなかった。再登板となれば、前回の経験を生かしたリベンジが期待される。巨人の新監督に誰が選ばれるのか、今後の選考の行方に注目したい。