8月は打率.284・OPS.919・7本塁打と自己最高クラスの活躍を見せた阪神の捕手・坂本誠志郎。ところが9月に入ると一転、13日終了時点で22打数0安打、14三振という深刻な不振に陥り、9月全体でも43打数2安打、打率.047に終わった。8月と9月、それぞれの期間の詳細データを比較し、何が起きていたのかを掘り下げる。
数字で見る落差――OPS.919から.250へ
| 指標 | 8月(21試合) | 9月(15試合) |
|---|---|---|
| 打率 | .284 | .047 |
| OPS | .919 | .250 |
| 本塁打 | 7 | 0 |
| 三振率(K%) | 32.5% | 41.5% |
| 四球率(BB%) | 7.5% | 11.3% |
9月は15試合53打席で43打数2安打、三振22個。月間打率は.047、OPSは.250まで落ち込んだ。不振が際立っていた9月13日時点では、7試合24打席で無安打、三振14個、四球ゼロで出塁は死球1回のみという極端な数字で、wRC+(リーグ平均を100とした打撃貢献度)も8月の185から-100へ真っ逆さまに落ち込んでいた。月の後半は四球を6個選ぶなど出塁の形は戻りつつあったが、安打はわずか2本にとどまった。
以下の原因分析は、不振が最も深刻だった9月13日時点のデータに基づく。
原因① ゾーン内でさえボールに当たらなくなった
最も注目すべきなのはコンタクト率の悪化だ。
| 指標 | 8月 | 9月 |
|---|---|---|
| ゾーン内コンタクト率(Z-Contact%) | 75.2% | 63.0% |
| 空振り率(Whiff%) | 35.2% | 46.3% |
| ボール球スイング率(Chase%) | 23.6% | 27.5% |
Chase%(ボール球に手を出す割合)の悪化は4ポイント程度に留まっており、「悪球に手を出すようになった」という単純な話ではない。深刻なのはZ-Contact%、つまりストライクゾーン内の球にすら当てられなくなっている点だ。8月は4球に3球はしっかり当てられていたのに対し、9月は3球に1球以上を空振りしている。ミートポイントやタイミングそのものがズレている可能性が高い。
原因② 2ストライクに追い込まれると自動アウト状態
カウント別データを見ると、9月の不振がより鮮明になる。2ストライクに追い込まれた場面は16打席あったが、そのうち14打席が三振(K%87.5%)。追い込まれる前の段階(ストライク0)でも3打席とも凡打で、際どい球への対応力そのものが落ちていることがうかがえる。8月は勝負強さも光っていた坂本だが、9月は追い込まれた瞬間にほぼ勝負が決まってしまっている状態だ。
原因③ 得意だったフォーシームが最大の弱点に一変
球種別データの変化はさらに衝撃的だ。
| 球種 | 8月打率 | 8月HR | 9月打率 | 9月空振り率 |
|---|---|---|---|---|
| フォーシーム(ストレート) | .348 | 6本 | .000 | 40.0% |
| カットボール | .111 | 0本 | .000 | 57.1% |
8月の坂本は、ストレート1球種だけで6本塁打を放つほどフォーシームへの対応が抜群だった(被打率.348、長打率1.130)。ところが9月はそのフォーシームに対して11打数無安打、空振り率も22.6%から40.0%へと倍近くに悪化している。得意球だったはずのストレートが、9月は最大の弱点に変わってしまっている。
原因④ 左投手への"異常な強さ"が消失
実は8月の絶好調ぶりは、特に左投手への圧倒的な強さに支えられていた。
| 8月・対左投手 | 8月・対右投手 | 9月・対左投手 | 9月・対右投手 | |
|---|---|---|---|---|
| 打率 | .452 | .163 | .000 | .000 |
| OPS | 1.436 | .552 | .000 | .067 |
| 本塁打 | 5本 | 2本 | 0本 | 0本 |
8月の坂本は対右投手には標準的な成績(OPS.552)だった一方、対左投手には32打席でOPS1.436・5本塁打という驚異的な数字を残していた。8月の活躍の大部分は、この「左投手への特異な強さ」が牽引していたと言っていい。しかし9月は左右問わずヒットが出ておらず、8月に見せていた対左投手への強烈な優位性は完全に消えている。左右どちらが原因という話ではなく、コンディション全体が落ちていると考えるのが自然だ。
背景として考えられる要因
データだけでは断定できないが、いくつかの背景が推測できる。ひとつは、8月に21試合とほぼ毎試合に近いペースで出場し続けた疲労の蓄積だ。捕手は扱う負担が大きいポジションであり、8月の好成績の反動が9月に出ている可能性は十分にある。
もうひとつは、8月の数字自体が持続可能な水準を超えていた可能性だ。特に対左投手OPS1.436・5本塁打という数字は、坂本のキャリアを通じた実力と比べても明らかに突出した外れ値であり、9月の不振はその反動としての"揺り戻し"という側面も否定できない。
その後とシーズン最終成績
9月の不振は月末まで続いたが、優勝決定後の10月は3試合で11打数3安打、1本塁打とようやく快音が戻った。シーズン最終成績は97試合で打率.197、10本塁打、36打点。打率こそ2割を切ったが、本塁打はそれまでの自己最多(2本)を大きく更新する10本を放ち、打点もキャリアハイとなった。対左投手では93打数27安打の打率.290、5本塁打と、シーズンを通しても左投手に強い傾向は変わらなかった。一方、対右投手は186打数28安打の打率.151と苦しみ、来季に向けた課題として残った。
まとめ
坂本誠志郎の9月不振は、単なる「悪球に手を出すようになった」という選球眼の問題ではなく、ゾーン内の球への対応力そのものが落ちているという、より根深い変化が数字に表れている。得意だったフォーシームへの対応、そして8月の活躍を支えた対左投手への強さがともに失われており、疲労による蓄積か、8月の"出来すぎ"の反動か、あるいはその両方かが背景にありそうだ。阪神打線全体の9月低迷とも重なった坂本の不振だが、チームは最終的にリーグ連覇を達成。10月には復調の兆しも見せており、正捕手としてクライマックスシリーズでどこまで状態を戻せるかが注目される。