DeNA プロ野球

DeNA借金完済の立役者は誰か――牧秀悟・筒香嘉智を中心に7月以降の野手成績を徹底分析

9月14日、DeNAは巨人との延長12回サヨナラ勝ちで今季最大15あった借金をついに完済した。6月30日に借金15という今季最悪の状態に沈んでから、実に58試合をかけて借金生活から脱却した。この復活劇を支えたのは間違いなく打線の爆発だ。今回は7月以降(30打席以上)の野手成績を一人ひとり深掘りし、誰が借金返済にどれだけ貢献したのかをデータで徹底的に掘り下げる。

チーム全体の変化――OPS.638から.722への劇的な上昇

まず、チーム全体の打撃成績が6月30日を境にどう変わったかを見てみよう。

〜6月30日 7月1日〜
チーム打率 .242 .252
チームOPS .638 .722
本塁打 41本 72本

打率自体の伸びは1分程度だが、本塁打数はほぼ同等かそれ以下の試合数でありながら41本から72本へと大幅に増加し、OPSも.638から.722まで跳ね上がっている。長打力が飛躍的に向上したことが、借金完済の最大の原動力になったことが数字からも読み取れる。

7月以降の野手成績一覧(30打席以上、OPS順)

選手 試合 打率 安打 HR 打点 OPS 出塁率 長打率
牧秀悟 57 .283 219-62 19 38 .995 .369 .626
筒香嘉智 45 .292 161-47 14 31 .993 .378 .615
古市尊 14 .323 31-10 1 1 .898 .382 .516
エンカーナシオン 51 .293 198-58 11 37 .827 .317 .510
宮下朝陽 49 .284 141-40 6 18 .797 .336 .461
度会隆輝 51 .288 170-49 4 25 .764 .358 .406
佐野恵太 49 .290 169-49 3 18 .763 .355 .408
宮﨑敏郎 44 .248 129-32 4 21 .721 .333 .388
松尾汐恩 41 .244 131-32 3 12 .687 .306 .382
梶原昂希 17 .209 43-9 1 5 .664 .292 .372
蝦名達夫 29 .228 92-21 1 8 .623 .308 .315
勝又温史 47 .250 152-38 2 11 .621 .305 .316
林琢真 34 .197 61-12 1 3 .591 .279 .311
戸柱恭孝 20 .231 52-12 0 1 .548 .259 .288

※9/14終了時点

二枚看板① 牧秀悟――HR・打点の量で牽引した主砲

借金返済の最大の功労者と言えるのが牧秀悟だ。7月以降57試合でOPS.995、19本塁打・38打点はチーム断トツの数字。実は牧はシーズン序盤(6月30日まで)の37試合でもOPS.834・6本塁打とすでに好調だったが、7月以降はそこからさらに本塁打ペースを3倍以上に引き上げている。

〜6月30日(37試合) 7月1日〜(57試合)
打率 .296 .283
本塁打 6本 19本
打点 28 38
OPS .834 .975

打率自体は若干下がっているが、それを補って余りある長打力の向上が数字に表れている。試合数がほぼ1.5倍になった一方で本塁打は3倍以上に増えており、まさに"化けた"と言えるレベルの変化だ。もともと勝負強さに定評のある牧だが、7月以降はそこに長打力という新たな武器が加わったことで、チーム最大の得点源となった。

月別に見ても、その勢いは一過性のものではないことが分かる。

打数 安打 打率 HR 打点 OPS
7月 82 22 .268 10 17 1.045
8月 101 31 .307 6 13 .937
9月(13日まで) 36 9 .250 3 8 .913

7月にいきなり10本塁打・OPS1.045という驚異的なペースで走り出すと、8月は打率.307とさらに確実性を増し、9月に入ってもOPS.900台をキープしている。3カ月連続でOPS.900を超え続けているという事実こそが、牧の活躍が単なる一時的な爆発ではなく、実力そのものが一段階上のレベルに到達したことを裏付けている。

二枚看板② 筒香嘉智――OPS.657から.995への完全復活

牧と並ぶ、あるいはそれ以上に印象的なのが筒香嘉智の変貌ぶりだ。

〜6月30日(40試合) 7月1日〜(45試合)
打率 .220 .292
本塁打 3本 14本
打点 12 31
OPS .657 .995

6月30日までの筒香は打率.220・OPS.657と、正直なところ苦しいシーズン序盤を送っていた。しかし7月以降は打率.292、本塁打はわずか5試合多いだけで3本から14本へと激増し、OPS.995はチーム全体でも牧と並ぶトップクラスの数字に到達した。借金15を抱えていた6月末の状態から一転、7月以降の筒香はほぼ毎試合何かしらの脅威を見せる存在に変わっている。

月別の推移を見ても、この変化が一時的なものではないことが分かる。

打数 安打 打率 HR 打点 OPS
7月 52 15 .288 4 14 1.008
8月 72 21 .292 8 13 1.045
9月(13日まで) 37 11 .297 2 4 .880

むしろ8月にOPS1.045とピークを迎え、9月に入っても打率.297をキープしたまま、なお高い出塁能力を維持している。若手時代からベイスターズの主砲として活躍し、その後メジャーでもプレーした経験を持つベテランが、シーズン中盤で爆発。状態が上向いたタイミングがちょうどチームの借金返済期と重なったことは、偶然とは思えない。それほど筒香の活躍がチームの勝利に貢献していることが分かる。

チームの得点力そのものも底上げされた

個人の活躍が積み重なった結果、チーム全体の得点力にも明確な変化が表れている。

試合数 チーム打率 本塁打 総得点 1試合平均得点
7月 22 .260 30本 111 5.05点
8月 25 .237 27本 91 3.64点
9月(13日まで) 11 .270 15本 52 4.73点

7月は1試合平均5点超という爆発力を見せ、8月にやや落ち着いたものの、9月に入って再び得点力が上昇している。月によって多少の波はあるものの、7月以降を通じて安定して3.6〜5点台を記録し続けている点は、借金を着実に減らしていく上で大きな支えになった。

他の主力選手達――エンカーナシオン、宮下朝陽、度会隆輝、佐野恵太

牧・筒香の2人に次ぐのが、OPS.700〜.800台でまとまった成績を残した4人だ。

エンカーナシオンは51試合で11本塁打・37打点とOPS.827。牧・筒香ほどの爆発力はないものの、コンスタントに長打を生産し、打点でも4番手として貢献した。

宮下朝陽は本連載でも以前取り上げた通り、シーズン中盤から活躍が際立つ一人だ。7月以降は49試合でOPS.797、6本塁打・18打点と、新人ながら中軸を任されるまでに成長している。

度会隆輝は51試合で打率.288、OPS.764。本塁打こそ4本と控えめだが、170打数49安打という高い出塁能力を示しており、出塁率.358はチーム上位の数字だ。

佐野恵太も49試合でOPS.763、打率.290と安定した数字を残している。本塁打は3本にとどまるが、169打数49安打というコンスタントな打撃で、チャンスメイクの役割を果たしている。

この4人に共通するのは、高い出塁率と一定の打率を両立している点だ。牧・筒香が"一発"で試合を決めるタイプだとすれば、この4人は2人への"つなぎ"の役割でチームの得点力を底上げしている。実際、この4人の出塁率を平均すると.341に達し、チームの得点力アップに繋がっている。

ベテラン主軸・宮﨑敏郎の立ち位置

かつてチームの顔として打率.300超えを連発してきた宮﨑敏郎は、7月以降44試合でOPS.721、打率.248とやや控えめな数字にとどまっている。それでも打点21はチーム上位で、勝負どころでの一打はまだ健在だ。全盛期ほどの打率は残せていないものの、経験値を生かした勝負強さでチームを支えている。

若手の奮闘――松尾汐恩、梶原昂希、古市尊、井上朋也

借金完済の裏には、若手選手たちの奮闘もあった。

正捕手として出場機会を増やした松尾汐恩は41試合でOPS.687、3本塁打。守備の要を担いながらの数字としては十分及第点と言える。

梶原昂希は17試合と出場は限られるもののOPS.664、蝦名達夫は29試合でOPS.623とともに一定の存在感を示した。

特筆すべきは古市尊だ。本連載でもプロ初本塁打の記事を取り上げたが、7月以降のわずか14試合でOPS.898、打率.323という高い数字を残している。出場機会こそ少ないが、出た試合ではしっかり結果を残しており、チームの底上げに貢献した一人と言える。

また、9/8以降スタメンに定着した井上朋也は2HRと長打を発揮し、怪我で欠場が続くエンカーナシオンの穴を埋める活躍を見せている。

課題を残した面々――勝又温史、林琢真、戸柱恭孝

一方で、7月以降も苦しんだ選手もいる。勝又温史は47試合と出場は多いもののOPS.621、林琢真はOPS.591、戸柱恭孝はOPS.548と、いずれも打率2割前後にとどまり長打も少ない。しかし、9/14の巨人戦では林はホームランを放ち、戸柱は猛打賞とチームの勝利に大きく貢献した

借金完済の構図――「二枚看板+つなぎ役」の分業体制

改めて7月以降の打線を俯瞰すると、その構造がはっきり見えてくる。牧秀悟・筒香嘉智という2人が本塁打・打点を量産する破壊力を担い、エンカーナシオン・宮下朝陽・度会隆輝・佐野恵太の4人がつなぎ役やランナーを返す役割を果たす。そこに宮﨑敏郎のベテランの勝負強さと、松尾汐恩・古市尊ら若手・控え組の一発が加わることで、チーム全体のOPSを.638から.722まで押し上げた。

特に牧と筒香の変化は劇的だ。2人合わせて7月以降だけで33本塁打・69打点、OPSはともに.990台という、まさに強力打線の中心にふさわしい活躍だった。6月30日時点で借金15という最悪の状況から、この2人が牽引し、周囲の選手たちがそれぞれの形で貢献したことで、58試合をかけた借金完済という長期的な巻き返しが実現した。

借金完済後、DeNAが見ている景色

9月14日時点でDeNAはセ・リーグ3位、首位阪神とは6.5ゲーム差、4位ヤクルトとは7ゲーム差というポジションにいる。優勝争いに絡むには依然として厳しい差だが、3位以内のクライマックスシリーズ進出はほぼ確定。借金完済という一つの区切りを越え、ここからは純粋に「貯金をどれだけ増やせるか」というフェーズに入る。牧・筒香の主力コンビが高水準を維持し続けられるか、そして課題を残した林・戸柱ら控え組がどこまで底上げできるかが、残り試合でのCS進出争いを占う鍵になりそうだ。

まとめ

DeNAの借金完済は、投手陣の踏ん張りはもちろんだが、何より打線の変貌が大きな原動力になっていたことが今回のデータ分析で裏付けられた。牧秀悟と筒香嘉智という二枚看板が7月以降そろってOPS.990台という驚異的な数字を3カ月連続で維持し、本塁打・打点を量産。その周囲をエンカーナシオン・宮下朝陽・度会隆輝・佐野恵太という好打者が脇を固め、さらに宮﨑敏郎のベテランの勝負強さ、松尾汐恩・古市尊ら若手・控え組の奮闘が加わった。このバランスの取れた打線構成こそが、6月30日の借金15という最悪の状態から58試合をかけての完済を実現させた最大の要因と言える。借金完済を果たした今、この打線がどこまで勢いを維持できるかが、クライマックスシリーズ進出争いの行方を大きく左右しそうだ。

あわせて読みたい

【おすすめ】月額702円(税込)でパ・リーグの試合を見放題!!詳しくはこちら→ 楽天TV
DAZN

-DeNA, プロ野球
-,

© 2026 スタジアム通信